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    熊本の営業所へ巡回指導…社保が倒産に拍車

    2009年7月23日

     
     
     

     「ローカルネットが掲げる『信義と商道』という基本理念が好きだった」と、業務の大半を求車・求荷ネットに頼っていた兵庫県西部の運送会社が6月末に倒産した。ネットワークに流れる荷物情報が激減したうえ、繰り返される運賃値下げの影響は大きかった。一方、同社の倒産は社会保険の未加入問題に行政が本腰を入れ始めたことも一因となったが、「最近は1か月の赤字が600万円ほどになっていた」(同社社長)と、いわば傷口が広がらないうちに事業の幕引きを決意したようにも感じ取れる。


     15年間の事業経営で同社長が手に入れたのは兵庫県の本社と熊本県の営業所、そこに配置していた20台そこそこのトラック。そのすべてを失い、会社も社長自身も自己破産へと向かわせる端緒となったのは今年2月、「熊本の営業所に(トラック協会の)巡回指導が入った」(同社長)ことだった。
     その後、兵庫の本社を社会保険事務所の関係者が訪問。すでに2月の途中だったものの、「いますぐにでも(社会保険に)加入しないと運輸支局へ通報することになる」との社保関係者の指摘に、社長も「いま入れば会社が潰れてしまう」と食い下がったが、そんな事情が理解されるわけもなく渋々ながら加入。ドライバーらにも経緯を説明する必要があったが、そこでも問題が発生した。
     「これまで保険をかけておらず、いまさら加入しても受給条件(加入年数25年以上)を満たさないから年金はもらえない」と、毎月の手取りが減るだけの状態を嫌った3人のドライバーが会社を去った。
     ただでさえ苦しい台所事情が社保料という負担増でさらに厳しくなったが、決定打は「専用車を作って対応してきた取引先の仕事が3日前通告によって切られた」こと。「信用していた相手だけに精神的ショックは大きかった」という。
     倒産後の7月上旬に社長から話を聞いた際、「直接取引を持ち掛けてもらったこともあるが、結局は他社の仕事を奪うということ。それよりも、信義と商道という大好きな精神に基づく事業形態を選んだ」と、ローカルネットにこだわり続けた思いを吐露。
     そのうえで「組織拡大によって新加入してくる事業者が同業者間で首の絞め合いを始めた。なかには払った料金と、収受した運賃との大きな格差に荷主企業が驚くという話も耳にしてきた。さらに組合員間で、それぞれが取った荷物を交換し合うという有り様。適正運賃という考えを完全に見失っている」と大ファンだったローカルネットと同時に、運送経営にも見切りをつけた格好だ。
     後片付けの最中だった事務所で話していると、牛乳販売店の配達人がやって来た。「こうなってしまったが、牛乳瓶の受け箱はこのままにしておく。これで別の販売業者が営業に来ることもないだろうから」と寂しげに語り、人数分の飲料品をそっと置いていく姿からは社長の人柄と、地域に親しまれてきた同社の日常がしのばれる。(長尾和仁記者)

     
     
     
     

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