-
物流ニュース
物流デジタルトランスフォーメーション 推進への課題を探る
2021年2月5日
データとデジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化・風土、働き方を変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は、コロナ禍で加速しており、物流業界でも待ったなしの状況にある。だが、物流DXの取り組みは始まったばかりで、推進していく上での課題も少なくない。
TSUNAGUTE 紙伝票の電子化、その経済効果は
物流業界が抱える人手不足などの課題を解決するためにIT活用による業務効率改善、物流DXは急務となっているが、もちろん、経済的なメリットも大きい。物流DXを推進するTSUNAGUTE(=ツナグテ、春木屋悠人社長、東京都千代田区)が昨年12月、関西大学名誉教授宮本勝浩氏の監修のもと、物流業界の「紙伝票の電子化」による経済効果を試算した。
それによると、物流業界の中の道路輸送業界の運送業と倉庫業の「紙伝票」が全て電子化された場合、伝票の電子化による業界全体の経済効果は年間約3533億6368万円(業界全体の紙伝票作成の費用約191億3043万円、人件費約3342億3325万円)となった。
そのうち、道路輸送業界の運送業の「紙伝票」が全て電子化された場合、1事業所の経済効果は年間約432万円、道路輸送業界の運送業界全体では年間約3229億2186万円。倉庫業の「紙伝票」が全て電子化された場合、1事業所の経済効果は年間約432万円、倉庫業界全体では年間約304億4182万円となる。
調査は、運輸・輸送業、倉庫業で伝票を扱う業務をしている全国の20から60代の男女200人を対象に行われ、事業所で1日に扱う伝票の数と1枚の紙伝票処理にかかる時間を調査した。このように、紙伝票を電子化するという変革を行う物流DXは、経済的なメリットも大きいことがわかる。
TSー1 一から育てるよりデータ化を進める
だが、これまで大きな変革が行われなかった業界で、ましてや個々の事業者がDXを推進することは容易なことではない。埼玉県川口市を拠点に運送・倉庫・施工を行っているTSー1(笠原大助社長=写真右)では、ドライバーなど人材のデータ収集を進めている。
笠原社長は「運送事業はドライバーがいなければ成り立たない事業なので、ドライバーを確保するためにも働きやすい環境をつくることが重要だと考えている」とし、「そのために、仕事とドライバーのニーズをうまくかみ合わせる配車作業がどんどん複雑になっている」という。
同社の配車は現在、原田勇一専務(同左)が1人で行っているため、配車担当者の育成が課題となっている。だが、原田専務の配車能力が高すぎるため、笠原社長は「一から育てるよりも効率よく確率が高いデータ化を進めていく」として、「ドライバーや原田専務の頭の中にある配車に必要な情報を、誰でもわかりやすいように見える化をしていくことで継承していきたい」としている。
このように、実行可能なところからDXに取り組んでいる事業者もある。Pavism 自社内での育成は困難、外部人材の登用を
一方、物流業界を主戦場に、営業、採用などに関する企業の課題を、ITやWebを用いて解決する「IT御用聞き」を生業としているPavism(=パビズム、東京都)の坂田良平代表は「DX推進で必要な担い手は、自社社員でなければならないため、自社内での育成が課題となる」と話す。
トラックドライバーやIT企業での経験を持ち、「IT御用聞き」として、自ら事業者の外部人材として活躍している坂田代表は、「DXを推進していく上で、必要な知識を持つ人材が必要」とし、「実際に、中小の運送会社がDXの担い手を自社内で育てることは難しい」という。そのため、コンサルや外部人材を登用して、彼らとともにDX推進の取り組みを行うことが実現への第一歩となるという。
DXはそれぞれの会社で目指すところが違うため、求められる人材も違ってくる。DX実現には、会社が目指すものを明確にし、できるところから実践して、成功例を積み上げていくことが実現への近道となる。外部人材を登用するにしても、必ずしも有名コンサルである必要はなく、DXを実現できるまで真剣に向き合ってくれる人材を登用することがポイントだと考えられる。
この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ
そんなことより付帯作業禁止待機時間削減高速パーキング確保だ