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    北海道新幹線 鉄道貨物に悪影響か

    2011年1月13日

     
     
     

     東北新幹線の八戸ー新青森間が昨年12月4日に開通し、2015年には北海道新幹線新函館駅までの開通が予定されている。札幌までの延伸は未定だが、この北海道新幹線について北海商科大学の佐藤馨一教授は「道内の貨物輸送体系全体に大きな問題が発生することは明らか。近い将来、北海道は『新幹線』か『鉄道貨物』かの二者択一に直面する可能性がある。農水産物の販売にも悪影響が出る」と懸念する。
     同教授は、地域交通体系論や都市・地域計画などを専門としており、北海道貨物自動車運送適正化事業実施機関評議委員長も務めるなど、道内の物流事情にも詳しい。


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     北海道は道路で本州とつながっていないため、道外への旅客・貨物輸送は鉄道・海運・航空に頼らざるを得ない。道内と道外間の機関別貨物輸送量は、鉄道が年間480万t程度で推移しているが、フェリーは平成19年度が650万tと2年前と比べ350万tも減少。鉄道は7%強の輸送シェアを安定的に確保している。
     佐藤教授は「北海道の農水産物は季節波動が大きく、なおかつ片荷という構造。道外への農水産物輸送には鉄道が最も適しており、約65%を担っている。農水産物の輸送に耐えられるモードは鉄道しかないと言ってもいい」と説明。しかし北海道新幹線が開通すると、この鉄道貨物が大きな打撃を受ける可能性があると指摘する。
     北海道と本州をつなぐ青函トンネル内には待機スペースがなく、「新幹線と貨物列車のすれ違いや追い越しが、安全面とダイヤ設定の視点から現段階で難しいため、新幹線を優先すると、貨物列車が青函トンネルを通過することが出来なくなるか、大幅に本数が少なくなる」というのだ。
     これを解決するには、在来線の貨物列車をのせて高速で運行する貨物専用新幹線「トレイン・オン・トレインの実現」か、「新幹線の速度を大幅に落とす」という、どちらかの措置が必要になる。
     前者は現在、JR北海道などが安定的に運行できるか実験を進めているが、「技術的に可能でもトンネルの両側に積み替え用の広いヤードの整備が必要となり、整備費用には500億─1000億円程度かかるはず。国も地方も財政が厳しく、道路特定財源が一般化された現在、負担できる主体はいないのではないか」と懐疑的だ。
     また、後者についても「何のための新幹線か」という「そもそも論」になってしまうことに加え、「費用便益も落ちてしまう」とする。このため「新幹線を選ぶか、貨物列車を選ぶか」というジレンマが発生してしまう。
     「新幹線が1時間に1本ペースのダイヤなら、貨物列車の本数は現状維持が可能だが、30分に1本なら、貨物列車の本数が大きく減少する」という。北海道の一次産業の競争力を高めるには輸送コストを下げる必要があるが、このまま新幹線の整備とダイヤが優先され、鉄道貨物が後回しにされれば、鉄道貨物のみならず、農業・漁業といった北海道経済全体にも大きな打撃となる。
     同教授は「道民や経済界は、新幹線が通ってハッピーという考えではなく、北海道の物流体系をどうするのか、農水産業の域外販売をどうするのか、地域計画全体をどうするのか、といったことを真剣に考えなければならない。ビジネス・ロジスティクスだけではなく、地域を支えるリージョナル・ロジスティクスという視点で考えていくことが重要だ」と訴えている。

     
     
     
     

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