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    従業員が会社の金持ち逃げ・・・「情けは無用」を知る

    2011年4月6日

     
     
     

     長年付き合いのあったドライバーを会社に招き、配車責任者として採用。しかし、それから2年後、その責任者は会社の金を持ったまま行方をくらました。「まさか」と目を疑った社長は茫然自失。なぜ、黙って会社の金を持って消えたのかと自問する一方、「情を捨て、きっぱりと決断することも必要だった」と悔やむ。情けをかけた結果が、金を持ち逃げするという最悪のシナリオとなってしまった。資金繰り悪化で街金に手を出したという同社だが、まさに、飼い犬にかまれてしまった格好の経営者の苦悩を追った。


     「自分が持ち込みでドライバーをやっていたときに世話になった人だった」と振り返る埼玉県の運送事業者。その後、自分で会社を起こし、営業ナンバーを取得した。
     一方、同社長が世話になったというドライバーとは、その後も仕事上で付き合いが続いていた。しかし2年前に、勤めていた会社が不況で倒産したのを機に、同社がそのドライバーを招き入れた。配車責任者として事務所勤務を任せたという。
     当初こそ張り切って取り組んでいたようだったが、思ったような結果が出ず、徐々に元気をなくし覇気が消えていったという。周囲では、「役に立たない」「必要ない」といった声が聞こえてきたが、過去に世話になったこともあり、社長は新しい仕事を与えるなど情けをかけ続けた。
     その配車責任者は、自分の置かれた状況を理解してか、自ら給料の額を減らすよう求めてきたという。それに対し同社長は、給料を下げずに、「自信を持って仕事に取り組んでくれ」と激励した。
     そんな矢先の昨年11月、その配車責任者が姿を消してしまった。「『親戚の見舞いに行く』と休んだ後、そのまま出社してこなくなった」。その責任者は、同社が用意した寮に住んでいたが、同社長が訪問したときにはすでに、室内はもぬけの殻だったという。
     逃げられたことを悟った同社長は、裏切られたショックで茫然自失。だが、ショックはその後も続く。旅行資金などのために従業員が貯めていた共済金を持ち逃げされてしまったのだ。
     さらに、配車責任者がいなくなってしまったことから、社長自身が配車も手掛けるようになったが、そこでさまざまな問題が持ち上がってきた。逃げた責任者が、安い運賃で取った仕事を高い運賃で傭車に出していた結果、支払い額が請求額よりも大きくなり、一気に資金繰りが悪化してしまったのだ。
     追い詰められた同社長は、給料の遅配を避けるため、消費者金融に手を出したという。幸いにも翌月に返すことができたが、現在も苦しい経営を強いられている。「情けは禁物だということが大いに理解できた」とし、「他のドライバーらが必要ないといった時に決断して解雇すべきだった」と悔やんでいる。

     
     
     
     

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