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    前借り、事故負担・・・天引きされて安月給、労基署に相談

    2011年3月28日

     
     
     

     ドライバーにとって給料といえば手取りの金額が基本。現場の声を集めると「地場中心の4t車だと18万円くらい。なかには15万円という例もある」となるが、その金額は法定福利費を天引きしている運送会社や、社会保険に未加入の事業者もあって、平均的な賃金を出す根拠とするには難しい面もある。また、トラック事業の労使間では珍しくない「前借り」や、事故を起こした場合に「免責相当額の弁償」が給料から差し引かれるというケースも多い。こうした光景は日常的に繰り返されてきたものだが、近年は様子が変わってきたようで、ある運送経営者は「行政機関に注意するのは当然だが、ドライバーの家族が災禍をもたらす可能性もある」と話す。


     トラック20台を抱える広島市の運送会社。社長によれば「社会保険料などとともに前借金や、任意保険の免責相当額をドライバーに弁償させる『事故負担金』などを給料から差し引いたことを記した給料明細を渡してきたが、それが失敗だった」という。かつて考えたこともなかった「ドライバーが役所に駆け込む」という事態に遭遇したらしい。
     一方、同市内で運送業務を手掛けて40年近くになる事業者の場合は「事故負担金も前借金として一本化して、毎月の給料から差し引いているが、これまで何の問題もない」と動じる素振りはない。周囲の同業者から「給料明細には前借金や負担金を一切明記せず、総支給が25万円であったとしても、実際に手渡すのは前借りなどを引いた金額に抑えれば済む」という話を聞いたこともあるというが、「うちの給料は銀行振り込みだし、明細と振込金額が違うことで問題になっても困る」との理由で、従来のままでやってきた。
     実際に、そうしたトラブルが発生した事業者があるという。「それまで給料の手渡しを続けてきた旧知の社長が3年ほど前、銀行への振り込みに変更。しばらくして『なぜ明細書と振込金額がこんなに違うのか説明して欲しい』とドライバーの奥さんが問い合わせてきたため、前借りや事故負担の意味合いを説明したというが、理解できないとして労基署に相談したらしい」と前出の経営者。「行政は『いったんは給料の全額を支給し、その後に前借金などを従業員から受け取るのが原則。その際には会社側も領収書を渡すようにして欲しい』との返答に終始するだけに、現場では各社が独自の工夫で対処しているのが実情だ」と続ける。
     また、「残業時間の割には給料が安すぎる」と、倉庫も兼業するドライバーの妻が会社ではなく第三者に相談して、話がややこしくなってしまった例もあるという。
     同社の社長によれば「仕事が終わって趣味のパチンコに足を運んでいたようだが、それを残業と聞いていた奥さんが激怒。当初から会社に話してくれれば大きな問題にならなかったが、それは相手の考え方だから仕方がない。いまもドライバーは働いているが、あのトラブルがあって以降、形式的なものだが各種の誓約書や念書を労使間で交わすようにしている」と話している。

     
     
     
     

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