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    「適正」運賃ではなく「適当」だ・・・事業者の声

    2011年6月30日

     
     
     

     「例えば、『大阪から広島まで3万円で走る運送会社がいることがけしからん』という理由で、それを引き上げることが運賃の適正化だと考えているなら大きな間違いだ」とトラック協会の総会を中座して、会場の外に置かれたソファに腰を下ろしていた広島市の運送会社社長。「いまだに適正運賃の収受を業界団体の活動の柱に掲げていることを、だれも何とも感じないのか」と続ける。
     しかし、同様の声は少なくとも今春の総会シーズンに各地で多く聞かれた内容だった。「燃料サーチャージの問題よりも、はるかに重要なこと」と神戸市の運送経営者も、「適正運賃を実現するには金額の引き上げではなく運賃体系、業界の構造にメスを入れないと不可能」とぶちまける。


     「ウチの25t車が大阪からの帰り荷で一体、いくらの運賃がもらえると思う?」と精密機械などの輸送を手掛ける広島市の社長。深夜割引を使っても高速料金が往復で1万円超、軽油代も同2万円をオーバーする道のりでありながらも「驚きの3万円」という。とはいえ安いことばかりをボヤいているわけではなく、「4万円は欲しいと直訴したところで、その値段ならウチを傭車せず、その会社が自車で運ぶのが当然。ウチとすれば3万円でやっていく方法を考えるしかないわけだが、この多重構造に根本的な問題がある」と指摘する。
     食品をメーンに扱う神戸市の経営者も同じ意見だ。「メーカーなど真の荷主が支払っている運賃がいくらで、そこから元請けの大手事業者が何パーセントを抜き取り、何社かの下請けが同様の手法で取扱手数料を搾り取る。倉庫などを抱える中堅の運送会社が近年、トラックを減らす方向に動いているのも当たり前。短期間でのトラックの代替えと大量のドライバー、数え切れないほどの厳しい規則に対応するための重なる設備投資…ただでさえカネがかかる実運送を、業界内の力関係で食い物にしている」と見ている。
     「以前、荷主(メーカー)が払っている本来の運賃がわかって驚いたことがある」と話す岡山市の社長によれば、「元請けの運送会社が30%を超える手数料を抜いていた」という。メーカーの物流子会社が設立されてから少し事情は変わったらしいが、こうした話は枚挙にいとまがない。姫路市の運送会社でも「3万円や4万円の運賃なら無理だが、長大物品の輸送や作業代も含まれるような大きな仕事の場合だと、何もしない元請けが半分を持っていくという話は珍しくない」と呆れ顔だ。
     前出の広島市の社長は「手数料を抜いて丸投げする大手や中堅事業者、それを小規模の事業者までが真似をして傭車を繰り返す。トラック10台の実運送の会社が、あるときは仕事を出す側に回る業界」という。いわば総会などの会場に集まっているのは荷主(元請け)と取扱事業をメーンにする運送会社(下請け)、さらに実運送事業者(孫請け)に加え、ときには元請けになることもある零細事業者…という何とも複雑な顔ぶれだ。
     「『丸投げするには最低でも10万円が必要』『せめて5000円の手数料は抜きたい』『広島から大阪まで5万円は欲しい』と、それぞれの思惑が異なる多重構造の業界で、適正運賃をスローガンに掲げることはナンセンス。取扱事業や傭車の制限などにもメスを入れない限りは、適正ではなく『適当な運賃』が続く」(東広島市の社長)という声も、かねて聞かれてきたことだ。 

     
     
     
     

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