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    4t車「速度超過」で運送4社を捜索、「減らない事故」背景か

    2011年8月8日

     
     
     

     車両総重量8t未満のいわゆる「4tトラック」の運転者に速度超過を命じたり、超過するのを容認したとして兵庫県警は、運転者が勤務するそれぞれの運送会社4社の営業所を一斉に捜索した。
     本紙の取材に対し兵庫県警の担当者は、運行記録計を4tトラックにまで装着義務化するという国交省の動きを認識しており、「総重量5─8tまでのトラックの事故が減らないというコンセンサスがある」との事情にも言及するほど、昨今の事情に精通している。
     同県警交通捜査課などは8日、神戸市内にある運送会社や大阪府内の2つの運送会社、広島県に本社のある運送会社の鳥取県内の営業所を含め4か所を道交法75条「自動車使用者の義務等」違反の疑いで一斉に捜索した。同法75条は、運行管理者らが運転者に対して速度違反や酒気帯び運転などをすることを命じること、または容認することを禁じている。
     同県警広報担当によると、4社に所属する4台の4tトラックはそれぞれ、兵庫、岡山両県内の高速道路や有料道路で昨年8月から今年5月までの間に、時速23kmから46kmオーバーで通行した。


     今回の捜索の疑いは、運転者が過去に速度超過を繰り返した経歴があるのを分かっていながら、運行管理者が運転者に運行を指示し、結果的に速度超過を容認したのかどうか、というところにある。平たい表現をすれば、「よくスピード違反をしているドライバーに、この仕事を任せた運行管理者は、直接にスピード違反を命令はしなくても、スピード違反前提で運転することを半ば認めながら運行を指示しているようなものだ」ということになる。
     では、「よくスピード違反をしているドライバー」ということを、運行記録計の装着義務のない4tトラックの世界で、運行管理者はどのように認識し、警察はどのように落ち度を立証できるのか。同県警交通捜査課の盛建志課長補佐は、「捜査上のことで答えられない」としつつも、「ドライバーの証言などで立証していくことは可能」との立場を取る。
     盛氏は本紙取材に、交通捜査課では一昨年から総重量5tから8tまでのトラックの事故が減少しないことに着目していた、と話す。また、同じ認識を持つ国交省内で、「運行記録計を4tトラックにまで拡大して義務化する動きがある」とも話し、4tトラックの現状と事故との因果関係に言及した。
     先月1日、国交省の「交通事故要因分析検討会」が出した2010年度版資料によると、営業用トラックでは昨年度と表記が変わっている部分がある。(1)2.5tから5t未満(2)5tから7t未満(3)7tから8t(4)8tから11t(5)11tから20tの5区分のなかで、死亡事故件数、重傷事故件数などをそれぞれ特記し、分析するページが加わった。
     それによると、いわゆる4tトラックにあたる(3)で事故発生率が最も高い結果となっている(統計は09年の1年間)。死亡事故件数で見ると(3)の1年間の件数は109件。事業用トラックの登録台数を分母としたときの事故発生率は0.043%で、次に悪い(2)の0.03%を大きく上回っている。
     同県警の今回の動きは、こうした国交省の分析を捜索という形で一歩進める役割も担う。捜査関係者は、「本当は荷主の責任まで問うべきなのだろうが、現行法ではこれが限界」とし、業界通の交通捜査の今後を見据えた発言をしている。
    ■一石投じる一斉操作
     今回の兵庫県警の捜索は、運行記録計の有無という問題を超えて、捜索のあり方、報道のあり方、そして社会のあり方にも一石を投じる形となっている。
     数年前、西日本のある運送会社は、兵庫県警から「無許可通行」という情報パッケージでテレビ、新聞をにぎわすこととなった。社長は「過積載運行は事実としてあったが、許可は得ていた。『無許可』という報道はひどすぎる」と訴えた。しかし、その声を取り上げたマスメディアは皆無だった。
     許可はあっても積載条件の違反があると無許可となってしまうという法的な事実関係ゆえに、捜査関係者や検察は略式裁判での有罪・罰金刑は獲得できた。しかし、「積載物品がスクラップという特殊物であり、積載現場で重量が測れないという事情を無視した事件でもあった」と社長は思っている。「スクラップの現場とはそういうもの。なのに、トラックの運行一つだけ切り離して取り上げられてしまった」。報道があって以来、「無許可」というレッテルゆえの荷主からの信用失墜で、いまも貨物が戻ってこない。
     今回、速度違反の下命容認事件の捜索を受けた4社中、近畿地方の3社は、国交省からの行政処分歴は過去3年間にはない。これだけで優良事業者とは言い切れないが、網の目のように張り巡らされた国土交通行政上の項目をクリアしていた事業者と取れなくもない。
     近畿運輸局監視指導部は、「警察は道交法を適用したもので、運輸局としてはコメントする立場にない」との回答。「規制強化の露払い儀式」とも取れる運送会社の捜索。報道されれば即悪党というイメージしか抱けない情報環境のなかで、「事業法の整備との関連のなかで位置付けなければいけない」との声もある。

     
     
     
     

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