コロナ禍をきっかけに耳にすることが増えた「エッセンシャルワーカー」という言葉。

生活に必要な医療・飲食をはじめ、運送業もその中に数えられる。しかし、生活を支える産業に従事する人々の待遇は決して良くなく、低賃金などにより業界を離れる人は多い。待遇改善に各社が取り組まなければ、担い手がますます減ることになりかねない。

２０２０年度における精神障害の労災請求件数のトップ３は、「社会保険・社会福祉・介護事業」「医療業」「道路貨物運送業」というように、エッセンシャルワーカーが上位を占めるというデータがある。いずれもコロナ禍であっても人と対峙しなければならない仕事で、精神的負担から辞職する人が出るため、結果として人手不足が加速し、残って働く人の負荷がより高まるという悪循環になっている。

運送業の場合は、長時間労働でなければ十分な給与を稼げないというイメージが根強く、実際にそういった会社は多い。運送だけに限らず、過剰なサービスを求めることがエッセンシャルワーカーの仕事量を増やし、長時間労働をしなければ満足な給与を得られない状況に陥らせているのではないだろうか。

低賃金はやがてサービスの質にも影響を及ぼしていく。待遇の悪さだけではなく、どこかネガティブなイメージが根強い空気感も、人手不足の要因になっており、それが離職率の高さにも直結していく。各社が適切な労働時間や安定して生活できる賃金、高すぎない離職率などを実現していくことができれば、おのずとマイナスイメージも払拭されていくのではないだろうか。