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    無保険トラックを危惧 損保業界からはじき出され

    2013年2月22日

     
     
     

     「我々の立場からすれば入らないのではなく、入れないというふうに映る。倒産も間近だろう」と損保業界の複数の関係者は口をそろえる。トラック運送事業で近年、自動車の任意保険をやめてしまったまま事業を続けるケースが出ているという。そうした無法トラックが第一当事者となる事故を起こし、結果として被害者側が泣き寝入りの状態になったという話も一つや二つで済まないのが実情。事業を開始して以降、特別なことがない限りは「任意保険の加入状況」がチェックされない現状を危惧する声も広がっている。


     「任意保険に入らずにトラック事業を続けるなんて異常。大事故を起こせば、その時点ですべてがパーになる」と、岡山市内の損保代理店に勤める男性営業マン。一方、広島市で代理店を経営するオーナーは「知人の運送社長から『経費を削るために任意保険に入らないという会社がある』という話を聞いたが、それは入らないのではなく、どこにも相手にされなくなったということ」と話す。
     交通事故を起こした契約者の保険料が大幅に割り増しとなる制度が昨年10月からノンフリート契約に導入されたが、事業の小規模化が進む運送業界でも「営業トラックはフリート契約」が絶対的ではなくなっており、ノンフリートの制度変更に無関心ではいられない。例えば、従来なら「無事故でランクアップした17等級」も「事故を起こしてランクがダウンした17等級」も割引率は同じだったが、新制度では前者が55%割引なのに対し、後者は38%割引に落ちる。
     任意保険にはフリート契約のほかに、ノンフリートとミニフリートがある。契約者が保有(使用)する自動車が10台未満なら掛け金が車両ごとで、「事故などを起こして保険金が支払われると契約等級が下がり、次年度以降の掛け金が増額される」という方式のノンフリートかミニフリート。10台以上は「一定期間の事故率(収支バランス)が翌年度の保険料に反映される」というフリート契約で、掛け金は契約者単位。一般的に掛け金はフリートのほうが安いが、支払われた保険金がそのまま反映されるため、重大事故を起こせば掛け金が一気に跳ね上がるリスクも。
     かねてトラック事業者はフリートが基本という認識だったが、新規に運送許可を得る台数規制が5台に引き下げられたことや近年の減車傾向、また、一つの重大事故ですべての契約車の掛け金が上昇することを嫌う事業者のなかには「ノンフリートに切り替えるため、わざと9台に減らすケースも珍しくない」と広島市の代理店。その一方で、増車しても契約者ごとに決まった割引率が適用される有利さや、ドライバーの高齢化が保険料(年齢条件)に影響しない恩恵などを受けるため、「乗用車やミニバイク(原付き)の任意保険を追加してフリートに切り替えようとするトラック事業者もいる」(同)という。
     ただ、いずれの契約にも共通するのが「支払保険金を抑えて収益を改善させるためにペナルティーを強化するのに加え、内容の悪い契約の引き受けを拒否する方向にある」と岡山市の損保営業マン。例えば通常、ノンフリート契約は6等級からスタートする形だが、損保業界で〝デメ契約〟と呼ばれる1〜5等級の場合は「更新も含めて、まず契約は不可能」と前出の広島市の代理店。また、「30〜50%割引は普通で、それ以上が優良契約者。15%くらいだと無条件で引き受けることはできず、社内稟議を通すことになる」と営業マン。トラック事業者を顧客に持っているが、「ダメ出しの基準に近いクライアントが増えている」。
     関係者の話では、「リスクの大きい契約者」として損保業界からはじき出されたと理解するのが現実的。高齢ドライバーによる交通事故の増加がトラック事業でも問題視され、先々を考えればフリートの掛け金も「年齢条件」で割り増しされる時期がくるかもしれない。営業トラックを無保険で走らせないためのチェック機能は不可欠。監督官庁である国交省が最優先すべき課題だ。

     
     
     
     

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