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    ドライバーが救った窮地 子会社化に反対、白紙に

    2013年5月16日

     
     
     

     荷主1社を相手に長年取引を続けてきた運送事業者が、荷主の世代交代で岐路に立たされた。これまでの付き合いも関係なく、物流の見直しに着手する荷主の姿勢にやる気を失い、会社を去る覚悟を決めた。いよいよ荷主の資本が入り、子会社化されるという直前、事態は急変する。荷主は子会社化をあきらめ、事業者はそのまま存続を許された。そこには、経営者とドライバーの信頼関係があった。


     首都圏に本社をおく事業者は、30年に渡って荷主1社と取引し、物流のすべてを担っていた。同社社長は荷主役員とも良好な関係を築き、同社なくしては成り立たない関係だった。しかし、そんな関係にヒビが入る。
     リーマン・ショック後の長引く不況で荷主がコスト削減に動き、物流の見直しに着手するようになる。物流コストの削減は運賃の値下げにつながる。社長は荷主の経営状況も理解していたため、ある程度の削減に従ったものの、少なからず抵抗もしていたという。
     時期を同じくして、荷主の世代交代が起きた。良好な関係を築いていた役員は次々と退任していき、経営トップをはじめ新しい役員が就任していく。同社が信頼関係を構築していたのは前役員で、新しい役員らとはそれほど馴染みはない。しがらみがない分、相手はドライに交渉を進めてくる。必死に抵抗を試みるも、荷主1社である同社にとって、対抗する術もなく、仕方なく運賃の大幅な値下げを受け入れた。しかし、抵抗する同社の姿勢を快く思わない荷主は資本を入れることを考え始めた。いわゆる子会社化である。社長は荷主に反抗する力はなく、会社を去る覚悟を決める。
     社長は事情を説明した上で、約40人いる従業員と個別に話をしたが、従業員にとっては、会社が変わるだけで仕事内容や待遇が変わるわけではない。荷主の物流子会社になるということは、それだけ体力もつくし労働環境も安定する。当初は「全員が賛成して移籍すると考えていた」という。しかし、いざフタを開けてみると移籍に賛成したのはわずかに8人。反対すれば仕事を失うことになる。それを承知で8割の従業員が反対した。
     社長がその結果を荷主に伝えたが、今度は荷主が困ってしまった。物流の仕事は輸送だけではない。物流加工も含んでおり、ノウハウのない人間が簡単に出来ることではない。荷主は結局、子会社化をあきらめ、現状のまま同社に物流をゆだねることで決着を図った。
     会社を去る覚悟を決めていた社長は一転、これまで通り同社を切り盛りすることとなった。社長を救ったのは、一緒に働いてきた従業員だった。「妻子やローンを抱える者もたくさんいる。それなのに自分の首をかけて子会社化に反対し、会社を守ってくれた。心配をかけたことは申し訳ないが、嬉しかった」と振り返る。
     社会保険は当然のこと、退職金制度や福利厚生面も充実させ、ドライバーの働きやすい環境作りに取り組んできた。従業員をないがしろにしない同社長の気持ちがしっかりと伝わっていたのだ。

     
     
     
     

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