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    車庫から何キロも離れた営業所 調整区域の矛盾

    2013年10月30日

     
     
     

     叩けばホコリの出る業界…そう揶揄されることも多いトラック運送事業。労務や運行計画といった、日常の管理業務に少なからず不適切な部分が見受けられるためかもしれないが、それ以前に、事業開始となる時点で早くも矛盾を抱え込む現実がある。市街化調整区域の問題がその典型で、行政当局の関係者も「知って、知らんふり」ともいえる理不尽な状態が続く。
     「だから自分は、ここへやって来た」と、兵庫県中央部の田園都市でトラック運送事業をスタートさせた社長。有蓋車庫(雨天点検場)が不要になって20年になるが、当時は義務化されていたことで建築可能な安くて広い土地を求めたのだ。


     手狭になったことで数年後、本社営業所の近隣に1000坪ほどの土地を確保するとともに、それまで1時間近くかけて通う格好になっていた自宅も約2km離れた場所に引っ越し。また、そのタイミングで本社を自宅に変更したが、理由は、1000坪の土地が市街化調整区域のために事務所を建設できなかったためだ。
     認可車庫としてなら使える1000坪の土地には現在、ドライバーの休憩施設も兼ねた事務所としてプレハブを置く。「認められないことは承知しているが、周りも同じような形でやっている。仕方がない」と話す。
     「トラック運送の事業場は基礎工事を施した建築物でなければならないということはない」(運輸支局の専門官)が、特積み事業者など一部の例外を除き、市街化調整区域にトラックの営業所を構えることは認められない。そのため、車庫からの直線距離で5km以内または10km以内(都道府県で異なる)の範囲に、営業所となる自宅や賃貸アパートなどを用意する運送会社が少なくない。
     一方、営業所として使うかどうかは別にして、車庫にドライバーの休憩・仮眠施設用のプレハブを置く事業者は多い。営業所または車庫に併設するように定められているためだが、「調整区域にはプレハブを置くことさえ許されない」と広島市の運送社長。自治体が認めてくれなければ、運輸当局でも休憩施設として認可することはできなくなる。
     市町村によって判断基準や見解は異なるが、「基礎工事の有無に関係なく、プレハブを置くだけでも建築物と見なす。もちろん、露天の車庫は構わないが、調整区域にプレハブを置くことは都市計画法に抵触する行為として指導し、悪質な場合には行政代執行の手続きを取ることもある」(広島市・宅地開発指導課)という。
     調整区域に住宅を建て、そこを本社営業所にすれば済むという話もあるが、そう都合よくはいかない。
     調整区域に数年前、本社営業所として兼用するために2階建ての住宅を建設した岡山市の運送社長は「うちの場合は農振から外れていたなど、ラッキーな条件が重なった。どこの調整区域でも建てられるというわけではないようだ。住宅と事務所の占有スペースの割合に縛りはあるが、営業所と車庫が一体化できたことでドライバーと車両の管理もやりやすくなった」という。
     車庫から何キロも離れた営業所で実際、どうやってドライバーとトラックを管理するのか。多くの社長から聞かれたのは「点呼のために、遠く離れた事務所まで来させることは非現実的」という声。結果として車庫に休憩施設を兼ねた事務所としてプレハブを置くが、そのプレハブを置くこと自体が調整区域では違法行為となるなら、トラックを止め置くために広い土地が必要な運送事業にとっては八方塞がりの状態。重大事故が相次ぎ、安全対策の現場に社会全体から厳しい眼差しが注がれるなかで、こうした矛盾についても白日の下にさらしていかなければ手詰まりは一向に解消されないだろう。

     
     
     
     

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