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    自社評価額の把握必須 スムーズな事業継承を

    2013年12月26日

     
     
     

     50年前、日本は東京オリンピックに沸き、物流事業者も好景気をバックに業績を伸ばした。そうした環境の中でバリバリ働いた創業社長の多くが今、世代交代の時期を迎えている。親子間の考え方の相違の解消や社員との連携、荷主との取引継続などやるべきことは山とあるが、中でも会社資産である株式の譲渡は、事業承継において直面する大きな課題でもある。対策を講じずに事業承継した結果、会社自体が衰退してしまうというケースも考えられるだけに、同課題においては、慎重かつしっかりとした対策が不可欠だといえる。
    近年、実娘の夫であるB氏に会社の第一線の座を譲った運送事業(埼玉県)創業者のA氏は、ある朝、自社倉庫に全社員を集め、「今日から社長を交代する」と宣言。B氏は専務として社長の傍らで実務経験を積んでいたが、交代の時期は本人にも知らされず、突然に実行された。A氏は「景気が落ち込んで会社の業績も落ちていた。自社株が底値と思えるときに譲渡できるように、まずは対外的な面を移行し、頃合いをみて株の権利も移動した」という。現在、会長を務めるA氏は「指揮系統が二つもあると混乱する。譲ったからには口は出さない」姿勢を貫いている。


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     同じく昨年、常務だった子息に社長の座を譲った都内の運送事業創業者C氏。社長在任時から自身は別会社を主体に経営し、本体の会社は子息に切り盛りさせ、荷主や同業者間の付き合いもできるだけ任せてきた。様々な要因で本体の会社がギリギリの赤字決算となったのを機に社長を退任して、名実ともに子息へバトンを渡した。「自社株も評価額が底値になったので一気に名義を移した。利益が出ていない時は逆にチャンスだった」と振り返る。両社とも自社の利益が落ち込み、評価額が下がったタイミングを見計らって事業承継に踏み切り、乗り切った。
     「資産を引き継げば、税金の支払いが発生する。税金を支払うためにキャッシュフローが弱体化し、経営に悪影響を及ぼすケースも少なくない」。そう話すのはファイナンシャルプランニング技能士1級の小川俊成氏。「中小規模のオーナー会社の場合、実権をいつ渡すかが重要なポイント」と述べる。
     実権とは、経営の決定権を持つ筆頭株主の権利で、生存中に実権を渡すか、生涯現役を通して死亡してから移行するかによって対策は大きく変わるのだという。先の事例は、評価額が底をついたことで、難なく事業承継に成功したが、通常、経営者は会社を良くしようと業績を上げる努力をする。そのため、業績が上がれば自社の株価も上がり、高い額で評価された株で譲渡を行えば贈与税も当然高くなる。
     とは言え、株価が安いうちにと早くに譲渡して権利を失えば、創業者であっても、経営に対し自分の意見を反映させるのが難しくなる。さらに、会社の株以外に個人資産がなく、遺産請求権を持つ人物が複数人いれば、株は事業承継する人物を含めて配分されるため株が分散化、会社を牽引するリーダー格がいなくなり経営が混乱する。
     この対策の一つとして挙げられるのが、生命保険を活用した「代償分割」という方法だ。現在の代表者が事業承継させたい人物を受取人として自分に生命保険を掛け、万一の際に承継者が分散した自社株を買い集めるための資金として、その保険金を活用する。小川氏は「承継者に資金さえあれば、あとは自社株評価額を見計らって買い戻すことも可能。自社株の評価額は常に知っておくべき」と進言する。
     同じく「自社資産評価の定期チェック」を事業承継のポイントとして奨めているのは、中部大学経営情報学部の教授でVMS副センター長も務める児玉充晴氏。事業承継の進め方の事例を「全体概要図」として、ステップアップ方式での事業承継の手段を提案している。内容は、社内体制の整備や取り組み、課題、進め方などを権限や作業区分で示し、マネジメントルールを構築していく段階を提唱する。児玉教授は「2年程度のスケジュール設定が必要」と説明する。
     自社株の評価額は、自社業績はもちろん、内部蓄積、土地などの含み損益、さらに同業上場会社の株価動向までが影響する。ただ、経営者にとっていつか来る事業承継に備え、自社の評価額を常に意識する姿勢は必要といえよう。

     
     
     
     

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