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物流ニュース
荷主勧告制度が改正 優越的地位の濫用に歯止め
2014年3月25日
運送契約の書面化推進に伴い、荷主勧告制度が改正される。事業者からは「制度があっても意味がない」という声が聞かれたように、これまでは一度も発動されず、全く機能していない状況にあった。今回の改正では、違反行為の度合いによっては一発で荷主勧告となる。新制度が機能すれば、荷主の優越的地位の濫用に一定の歯止めがかかり、事業者にとっては、法令順守の徹底を図る上で、荷主と交渉しやすい環境が整うだけに、動向が注目される。
荷主勧告とは、実運送事業者が行政処分などを受けた際、その違反が荷主の行為に起因すると認められた場合に、荷主に対して再発防止の勧告を行うもの。
旧制度では、「過労運転」「過積載運行」「最高速度違反」などの悪質な違反行為を受け、国が輸送の安全確保命令や行政処分を行う際に、第一段階として荷主に対し「一般的内容の協力要請書」を発出しなければならなかった。それから3年以内に違反行為が認められた場合は、「警告的内容の協力要請書」を、さらにそこから3年以内に違反を確認した場合に荷主勧告が発動されるという仕組みになっていた。
このような手順を踏まなければならないため、悪質な行為に対する適切な処分が行われないまま、事実上の「野放し状態」だった。実際に、これまで「警告的内容の協力要請書」は「年に一度出るか出ないか」(自動車局貨物課)で、荷主勧告も「平成2年の施行から一度も発動される事はなかった」(同)という。
荷主勧告の調査の端緒となるのは、(1)実運送事業者への監査などで、運送契約書などの書類、関係者からの証言から荷主の主体的関与が認められた場合(2)同一の荷主と取引関係にある複数の実運送事業者について、同一の違反を行った場合(3)過去3年以内に警告的協力要請書を含む「警告書」が発出された荷主について、荷主からの運送依頼で実運送事業者が同種の違反で行政処分を課された場合(4)荷主関係者が共同正犯、教唆犯、強要などで捜査機関が捜査。荷主が過積載車両運転の要求などを行ったとして、警察署長が再発防止命令書を発出した場合が挙げられている。
こうして行われた調査で「非合理的な到着時間の指定」「やむを得ない遅延に関するペナルティ」「積み込み前に貨物量を増やすなどの急な依頼」「荷主管理にかかる荷捌き場で、手待ち時間を日常的に発生させているにもかかわらず、実運送事業者による改善措置の要請に応えない」など、荷主が実運送事業者に対する優越的地位を利用した場合、荷主の指示が認められた場合に、運輸局から速やかに本省に勧告案が上申されることになる。
一方で、実運送事業者の違反行為に対し、荷主の明確な関与が認められない場合は、これまで通り再発防止の協力を要請する通達が発出される。ただ、今回の改正では、違反行為の度合いによって、「荷主勧告には至らないものの、実運送事業者の違反に関し荷主の関与が認められる場合」には、協力要請書の発出がなくても警告書が、さらに「実運送事業者の違反行為が主として荷主の行為に起因するものであり、かつ実運送事業者の処分のみでは再発防止が困難である場合」には、即座に荷主勧告が発動されることになる。
荷主勧告が発動されれば、企業名はおろか事案概要まで公表される。これまで運送事業者からは「制度はあっても機能していない」「意味がない」という批判的な声が多く聞かれていた。しかし、新制度が機能すれば、荷主への抑止力が働き、運送事業者が荷主と交渉しやすくなることも期待される。この記事へのコメント
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