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    模索する荷主との付き合い方

    2015年1月7日

     
     
     

     ドライバー不足が深刻となり、物流が立ちいかなくなるという危機感が荷主にも広がりつつあるなかで、運賃や待遇改善の交渉に成功する事業者も増えてきている。その一方で、売り上げの大部分を特定の荷主に依存していることから、大胆な交渉に踏み出すことができない事業者も少なくない。環境変化が激しい時代に、特定の荷主への依存度が高い状態は、事業者に大きなリスクとなりつつあるといえる。荷主側の求めるものが多様化・複雑化しているなか、荷主との付き合い方を模索する事業者の姿を追った。
     食品輸送を手がける首都圏の運送会社は、年商の約7割を大型店舗への冷凍・冷蔵品の納入に頼っている。しかし、荷主から付加価値を認めてもらえず、常温品と同じ運賃が設定されている。冷凍・冷蔵車の場合、車両価格は通常車両の3割高、こまめなメンテナンスが必要な上、メンテンナスに出している間はリース料を払って車両の穴埋めをする必要がある。加えて、車両の寿命も5年から7年と通常車の5割から3割も短命だ。コンプレッサーを回すために燃料も余分に必要となる。ルート配送の場合、納品時に決められた温度帯を保っていないとペナルティが発生することも。採算が取れず、運ぶほど赤字が膨れる状況だが、立場が弱く、運賃交渉は全く出来ていない。


     また、運送会社同士の付き合いが足かせとなるケースもある。売り上げの9割以上を1社に依存している埼玉県の運送会社社長は、「安定した仕事で待遇も悪くないが、依存度という面では怖さもある」と打ち明ける。しかし、地場の事業者同士のつながりのなかでは、「新規荷主を獲得しようにも動きようがない。横から奪うことはできない」と漏らす。
     一方、神奈川県の運送会社は、売り上げの8割を荷主1社に依存していたが、徐々に減車され売り上げも右肩下がりとなっていた。加えて、東日本大震災で荷主の物流が止まってしまう危機に直面。「このままでは先がない」と考え、大きく経営方針を転換した。
     5本の指に収まるほどだった荷主は、新規に約20社を獲得。スポットや実運送以外の仕事も増やした。選択のカードを多く持つことで積極的な交渉が可能となった。「交渉の席についてもらうには、運送会社側から効率化のアイデアを出すなどの企画力も必要」と同社の社長は話す。
     千葉県成田市の運送会社は、大口取引の他にスポット的な仕事を得ることでリスクを分散。売り上げは大口荷主の方がよいが、「拘束が長い仕事の翌日は、負荷の少ないスポットの仕事を振ることでドライバーを休ませることができる」とメリットを指摘する。
     また、荷主から簡単に切られない関係を構築している運送会社もある。二次請けでメーカーの機械部品を運ぶ運送会社は、荷主1社あたりの依存を高くても年商の2・5割以下に抑えている。「1社の荷主に多くのドライバーを投入してしまうと、穴が開いた際に、まだ教育の行き届いていないドライバーを送り込まざるを得ない状況となり、全体の質が落ちてしまう」と指摘。「1社あたりをある程度の人数で抑えておくことで、質の良いドライバーだけで回すことも可能」とし、「品質を守るためには『うちのキャパではこれ以上は無理です』と断る勇気も必要」と強調する。
     荷主側の考え方も様々だ。建材メーカーの物流担当者は「多くの車両を提供してくれる事業者を大切にしたい」と話す。人材不足という背景もあり、「離れない事業者の確保を念頭に置いている。関係が深まれば仕事もやりやすくなる」と、依存度の高い運送会社を歓迎。一方で、「自立した事業者と、意見交換しながら仕事を進めたい」と話すのは、大手自動車関連メーカーの物流部長。「経営の責任を負えるわけではない。他の荷主とも良好な関係を築いている事業者を求めている」という。物流部門の組織改編を行ったばかりの同社では「視野の広い事業者からの提案を積極的に採り入れ、物流の効率化を図りたい」としている。
     運送会社の経営に詳しい社労士は「荷主とのバランス経営が生き残りのポイント。1社あたりの売上依存が4割を超えると運賃をはじめ、運送会社からの交渉は難しくなる。理想は1社につき年商2割までに抑えたい」と指摘する。

     
     
     
     

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