「開業以来、初めての赤字決算」と肩を落とすのは、海コン輸送を３０年にわたり展開してきた運送事業者。リーマン・ショックやコロナ禍でも赤字を計上することはなかったが、直近の物量減少や、燃料をはじめとするあらゆるコスト増の影響で赤字に陥った。

同事業者は、「コストアップ分を運賃に転嫁したくても、荷主からの理解はなかなか得られない」と説明。「売り上げ自体も約３割減少し、車両整備や修理の一部内製化など、コスト削減の努力もしているが効果は小さい」と肩を落とす。

さらに、「２０２４年問題を見据えて、運行距離の短縮や運行回数の削減を行い、ドライバーの休日も増やしたが、人件費自体を削減することはできず、かえって上がったことが赤字転落の要因となった」という。

同社社長は、「今後はトレーラに特化するのではなく、小型車などを用いた総合的な物流事業に変更していく必要があると考えている」と話す。

先行き不安が顕著に

「２〜３年前から人材不足が顕著になってきた。当社は、海コン事業者なので、運転するには大型免許とけん引免許が必要。一般貨物と比較してさらにハードルが高い。昨今の状況で経験なしから海コンのドライバーになりたいと言う人は非常に少ない」と愚痴をこぼしたのは、神戸市中央区の運送会社の社長。

「昔の海コンドライバーは、なりたくてもなれないほどの人気職だった。それが今では、免許制度の複雑化や稼ぎが少なくなったことで魅力をなくし、新規の人材が入ってこない。今いるドライバーも、安定感やネームバリューを重視し、大手の名のある会社に行くという致命的な状況になっている」と語った。

運賃に関しては「今までの丼勘定を見直し、付帯作業についてもきちんと請求するようになった。新規の案件に関しては、標準的運賃を参考にして交渉している。しかし、運賃を上げてもそれを上回る勢いで物価が高騰しており、ドライバーの給与に反映できるほどではない」という。

海コン業界に対して同氏は「今、分岐点にいる。２０２４年問題やトラック新法など話題に事欠かない状況にあり、我々のような現場の声が通りやすい環境ができつつある。運賃や労働環境が見直され、５年後、１０年後には収益率も良い運送会社が新しく生まれる環境が出来上がるかもしれない。そのために今、必死になって生き残る必要がある」と熱く語った。

納得できない「運賃の差」

海コン輸送を行う大阪府堺市の運送事業者は、「大阪・南港から東大阪市までの運賃は、２０フィートコンテナが１万８０００円程度だが４０フィートは２万円後半。人件費も燃料価格も高速代も同じなのに、運賃に大きく差があることに違和感を覚える」と吐露する。

さらに、「ベテランになれば、当然、運賃の高い４０フィートコンテナを輸送したがる」とし、「配車にも気配りが必要になる」とため息をつく。

阪神港で同じく海コンを輸送する運送事業者は、「海コン輸送は積み込み・積み下ろしに非常に時間がかかる。ひどい時には４、５時間の待機も当たり前で、ドライバーもそれを承知でコンテナピックや返バンを行っている」と説明。そのうえで、「同じような待機時間を必要としながら『一方は高い、もう一方は安い』では、仕事を選り好みしたくなるのは当然」とし、「やはり２０フィートコンテナと４０フィートコンテナの運賃を同額にしてもらうことが必要」と話す。