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    事故発生前の逮捕 兵庫県警、過労運転者を職務質問

    2015年12月21日

     
     
     

     過労運転が原因の交通事故が発生した場合、運送事業者や運行管理者が逮捕される例が相次いでいる。しかし、逮捕されるのは交通事故が発生した後のことで、発生前に逮捕される例は極めて少ない。それは、このままの状況が続けば交通事故が発生するかどうかを見極めることが非常に困難だからだ。しかし、兵庫県警は10月15日、加古川市内の運送事業者を道交法違反・過労運転の下命容疑で逮捕した。同事業者は事故を発生させる前に逮捕されたことになる。
     兵庫県警は10月15日、加古川市内の運送事業者(67歳)を逮捕した。同事業者は男性ドライバー(60歳)に「大阪市から広島県福山市までの配送を命じた」という。同ドライバーは昨年11月、高速道路上の路側帯に停車していたところ、同県警から職務質問され、その際、同ドライバーは「違反だと分かっていたが、どうしても眠いため仮眠していた」と答えたことから、同事業者の運行実態などが捜査された。
     同県警では「交通事故が発生する以前に立件するというのは、かなりレアなケース」と説明。「運転者は十分な休息もなく運転を命じられていた。今後も(交通事故前の立件は)進めていく」としている。


     同県警が「レア」なケースに踏み切った背景には、「過重労働への取り組みを強化していく」という政府の姿勢もある。厚労省によると、「過重労働の定義には、あいまいなところもあって難しいが、過重労働による労災認定も増えており、増加傾向にあると言ってもいい」という。「(過重労働に対する)法律が整備されたこともあり、今後も取り組みは強化していく方針」という。
     厚労省が4月から6月までに実施した監督指導結果では、「運輸交通業215の事業場のうち195の事業場で労基法違反があり、うち48の事業場で過重労働による健康障害防止措置が未実施だった」ことが報告されている。同県警の運送事業者逮捕は、増加する過重労働にくさびを打ち込む意味も込められているようだ。
     逮捕された運送事業者は「ドライバーが疲れていたのは知っていたが、会社の利益のために走らせた」と話しているという。経営に苦しんでいる運送事業者は兵庫県だけに限らない。他府県の警察も同じ動きを見せるのだろう。過労運転が全国でまん延しているとすれば、同様の動きを見せる可能性は少なくない。
     運輸労連が今春に実施したトラックドライバーアンケートでは、1か月で残業時間が「100時間まで」と答えた割合が14%、「100時間以上」が3.7%になっている。
     建交労関西支部(大阪市)では「過労運転についての相談があるのは事実だが、統計的な資料がないので数値までは把握していない。しかし、『我が社では休みがまったくない』や『疲労した状態での運転が続いている』などの切実な声がある。これは以前からあるもので、あまり変わっていない」と指摘している。
     また、物流業界以外の労働組合にもドライバーからの相談があるという。なにわユニオン(同)でも「近年、増えているのは事実。『休みがない』『変則的な勤務で悩んでいる』などの声がドライバーから寄せられている。(相談に来るのがドライバーだけではないので)運転者からの相談件数は少ないかもしれないが、増えているというのは感じている」という。
     ドライバーが職務質問され、事業者が逮捕されるという事例が増加する前に、ドライバーの労働時間改善に率先して動く必要がある。
    脳・心臓疾患の労災補償状況 運輸業・郵便業が最多
     厚労省がまとめた平成26年度の労災補償状況を見ると、脳・心臓疾患に関する事案の補償状況では、請求件数・支給決定件数ともに「運輸業・郵便業」が最も多いことがわかった。
     全産業での請求件数は763件だったが、「運輸業・郵便業」は168件。「卸売り・小売り」126件、建設業97件と続いている。厚労省職業病認定対策室では「労働時間の長さや深夜の労働などの付加部分も原因の一つではないかと考えられる。この問題では労働時間の長さが大きなウエートを占めており、労働時間が長ければ長いほど労災補償を受ける件数が多くなっている。運輸業界は長年、高い数値で推移しており、常にトップ周辺に位置している」としている。
     時間外労働別で見ると、時間外労働が60時間未満では労災支給はなく、死亡者も出ていない。しかし、60時間を超え、80時間以上になると労災支給額と死亡者は大きく跳ね上がる。
     また、精神障害に関する労災補償状況でも、支給決定件数を見ると「運輸業・郵便業」は製造業(81件)、卸し・小売り(71件)に次いで多く、63件となっている。
     長時間労働が当たり前になっているトラック運送事業で過労死を含めた労災申請が多いのは、ある意味で当然とも言える。

     
     
     
     

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