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    滋ト協 高卒人材獲得へ、物流出前講座が始動

    2015年12月31日

     
     
     

     滋賀ト協(田中享会長)が展開する「物流出前講座」が動き出した。中途採用が主流だったトラック業界で、高卒人材の獲得に向け滋ト協が12月9日、滋賀県立八日市南高等学校(東近江市)で第1回の「物流出前講座」を実施した。今回の講座を通じて、生徒らがまずは「知る」ことで、就職先としてトラック業界を選択する実例が生まれることを期待するものだ。田中会長は「トラック運送業界はまだまだ伸びしろのある業界。皆さんのような若い潜在能力が必要」と、生徒に語りかけた。
     滋ト協は今年度からの事業として「物流出前講座」実現に向けて始動。7月、県立八幡商業高等学校(近江八幡市)を訪問し、出前講座への理解を求めたのを皮切りに、県下の7支部それぞれが各地域の高等学校へ実際に足を運び、説明を行ってきた。
     「物流出前講座」の1校目に選ばれた県立八日市南高等学校には、「農業科」「食品科」「花緑デザイン科」の三つの学科があり、平成26年度に40周年を迎えた。3年生の希望者は4月に製造業、7月には各学科関連産業での体験実習(インターンシップ)を行うなど、キャリア形成支援事業が自慢の高校だ。また、在学中にフォークリフト運転技能免許や玉掛技能免許などを取得できる。卒業後は就職を選択する生徒が多く、地元メーカーの工場や大手運送会社、病院など幅広い職種へ就職している。


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     今回は、今秋に農家や関連企業での体験実習を終えたばかりの2年生112人が、トラック業界について理解を深めた。講座の冒頭、進路指導主事の村西慶久教諭が「来年から就活・進学モードに突入する。今日は、私たちの生活を支える物流の仕事について話を伺う。皆さんの進路を考えるきっかけになれば」とあいさつした。
     田中会長は「我々物流業界は、日本を支えている基幹産業ともいえる。人間の身体でいうと血液と同じ。ポテンシャルの高いこの業界に若い力を注いでもらえたら。私の会社には本学の卒業生が何人もいるが、皆、粘り強く仕事に取り組んでいる。来年、皆さんの中から何人かが物流業界に就職していただければ」と生徒に熱く訴えた。
     その後、YouTubeで公開している滋ト協制作のWebドラマ「走れ! 風になって未来へ」と、県内で実際に活躍するトラックドライバー男女1人ずつを紹介した映像(びわ湖放送放映「暮らしを運ぶ『元気印』滋賀のGoodドライバー」)を放映した。
     さらに、湖東支部の尾賀康裕支部長が物流の基礎知識を説明。実際のナンバープレートを見せながら、事業用と自家用のナンバープレートの違いやトラックの種類、県内のトラック運送事業者数について解説。続いて滋ト協の大黒栄一参事が、準中型免許の新設なども踏まえ、運転免許の種類について説明した。
     最後に、尾賀支部長は東日本大震災におけるトラック業界の役割について「トラックは、日々の生活に密接に関わるだけでなく、いざという時の生命を守る働きもあり、大きな力を発揮する」と説明した。田中会長は物流出前講座終了後、「取り組みはまだ始まったばかり。どうすれば生徒や先生に伝わるか常に改善していき、長いスパンで事業を進化させていきたい」と述べた。
     少子高齢化に伴う人口および労働人口減少が、業界の人材不足に大いに影響している中、大手運送会社が展開しているイメージ戦略「佐川男子」のほか、別の大手企業では人気アイドルグループなどを起用したCMの展開などにより、幅広い世代で運送業に抱くイメージは少しずつ変わりつつある。しかし、中小・零細企業が大半を占めるトラック業界で、大手企業のような戦略を独自にとるのは難しい。
     その中で、ト協が会員事業者の採用活動における後方支援に向け動き出したのは、大きな一歩だ。高校卒業後の就職では先生や保護者の一定の理解も必要で、広く一般に正しい理解が普及しなければ意味がない。5年、10年先の採用に繋げようと今後も県内の高校に出向き、理解を求めていく。
     「物流出前講座」は、会員事業者が学校に求人票を出しやすい環境づくりにつなげるだけでなく、正しいトラック業界の理解、今後の職業選択の一つとなるなど、さまざまなメリットがある。業界団体が人材確保のために具体的に教育現場に呼びかけた例として、今回のような取り組みが他地域に波及することが期待されている。
     会長就任時に「経済」「人」「コンプライアンス」の三つに重きを置くという行動指針を打ち出している通り、「物流出前講座」の実施は田中会長の悲願だった。かつて本紙の取材に「協会が会員企業の後方支援を行い、人材に集まってもらうための環境整備を行っていく。新卒が集まらないという物流業界のイメージを払拭したい」と話していたが、ようやく具現化した。
    ◆第2回は栗東高校の61人 「選択肢の一つ」プレゼン
     第2回「物流出前講座」が、県立栗東高校(栗東市)で行われ、2年生61人(午前30人、午後31人)が物流業界について理解を深めた。
     午前の部で甲斐切稔副会長は、「進路について、まだぼんやりとしたイメージしか持てない人も多いと思うが、夢の実現のために今から頑張っていただきたい。自分の技術を磨くためにも選択肢の一つに物流業界を入れていただければ」と述べた。
     講座では、滋ト協経営支援委員会の丸山義広委員長が、物流のしくみやトラックの種類などについて解説。「『自分は何のために働くのか?』と考えてもらえたら」と述べた。また、東日本大震災時に滋賀県から福島県へ物資を輸送した際のドキュメンタリー「トラック 被災地へ走る」を放映し、緊急時におけるトラックの重要性について説明した。
     午後の部では、田中会長が「来年は進路を決めるため人生の大きな分岐点を迎える。何を選択するか、決める際の一つの引き出しを我々がプレゼンする。物流業界では女性の活躍の場も多く、ドライバーだけでなく荷役作業員、運行管理者など多くの職種が物流を支えている」と述べた。
     講座終了後、生徒に実施されたアンケート調査では、「トラックや物流が社会において重要な役割を担っていることを初めて知った」「物流業への就職に興味がわいた」と回答した生徒がいた。

     
     
     
     

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