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    「標準運賃」は特効薬か? 進まぬ荷主との運賃交渉

    2016年7月19日

     
     
     

     適正運賃の収受実現に向け、取引環境・労働時間改善中央協議会のもとにワーキンググループ(WG)を設置し検討を進めることが決まっている。荷主と運賃交渉する際に目安となる、「標準運賃」や「最低運賃」の策定に期待が寄せられる。しかし、事業者によって運行時間や形態が異なれば、下請け・元請けなどの立場によっても変わる。さらに、基準を守れていなかった過去、原価計算をしている事業者が3割にとどまるという現実をみると、新たな運賃決定の水準を策定するハードルは高い。
     国交省は同WG内で、「過去の議論を踏まえた上で、どのような取り組みを行うことが望ましいかを検討する」としている。この「過去の議論」というのが、「トラック産業の将来ビジョンに関する検討会」のもとに設置された「最低車両台数・適正運賃収受WG
    (野尻俊明座長、流通経済大学教授・当時)」だ。
     当時も、国に対し標準運賃を求める声が上がっていた。標準運賃を発動するには、(1)需給の不均衡により運賃・料金が著しく高騰または下落する可能性があること(2)事業改善命令等では適正化が期待しえないなど、特に必要があると認められる場合――の条件を満たす必要があるが、当時のWGの議論では、「認可運賃があっても守られていなかった」「個々の企業により運賃体系、運賃設定、原価が多様化していることから、足並みを揃えることは難しい」などの意見から、「法定要件を満たさず、標準運賃を発動する状況にない」と結論づけた。


     建材を運ぶ都内の事業者は、昨年末から荷主と運賃交渉をしている。対応するのは配送エリアの支店長や物流担当者。原価計算をし、同社の運送にどれだけの経費がかかっているか、またドライバーを確保するにはいくら上積みしないといけないのかを訴えた。「仕事を切られても仕方ない」との姿勢で臨んでいるが、荷主側の反応は「事情はわかるけど」の一点張り。「うちには関係ない」と突っぱねる担当者もいた。
     もし、スポット・チャーター・貸し切りなどの運行形態ごとの標準運賃があれば、価格交渉の目安になるし、「国が定めた」と言えば荷主も法令違反を恐れて無視しにくくなる。それでも同事業者は「同じものを運んでいても仕事内容は違う。そんな状態で、全社一様の運賃を決めるのは難しい。国が入る話ではなく、事業者個々の努力で決めるもの」と話す。
     「標準運賃」「最低運賃」は良いことばかりではない。規制緩和により、事業者らは創意工夫を凝らして多様なサービスを生み出してきた。きめ細やかな仕事に荷主からの信頼も厚く、高い運賃をもらえる企業も、標準運賃ができれば、顧客の満足度が高くても・そうでなくても横一線に並ばされる。企業努力が評価されて運賃に反映されなくなるというリスクをはらんでいる。
     強い姿勢で交渉に臨んできた同事業者も、さすがに疲れの色が見え、「一企業でできることと、できないことがある」と肩を落とす。目安となる運賃の制定には、荷主側でも意見は割れている。
     「ドライバー不足など物流業界の深刻な事情を考えれば、ドライバーを確保するには協力会社のドライバーの給与水準を底上げしなければ」(ゴム製品を取り扱うメーカー系の物流子会社)と回答し、標準運賃の制定に一定の理解は示している。ただ、「同業他社とコスト力を比べた時に、うちだけ荷主に高い料金を提示できない。今はなんとか待機時間の削減や機器を導入して省力化するなどして対応しているが、それだけで補えなくなる日もそう遠くはないのではないか」と危惧している。
     一方、物流は関係会社も含め一元的に管理し、同じ時期に一気に入札するというOA機器などを取り扱うメーカーは、標準運賃の策定には慎重派。「一括管理すれば、同じルートでも事業者によって違う運賃を提示する場合に平準化できるし、時間や行き先により仕事の組み合わせも考えられる。運賃は総合的に決めているので、柔軟性を残した方がいい」と話している。
     このように「標準運賃」や「最低運賃」の制定については賛否両論あるが、ただ、現状の運賃水準では、ドライバーの待遇改善や労働環境の整備はままならず、人材不足が深刻化する懸念はぬぐいきれないことは確かだ。

     
     
     
     
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