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物流ニュース
業界イメージ向上へ 製造業「ゲンバ男子」企画に学ぶ
2017年1月19日
昨年10月の月別の倒産件数を見ると、運輸業は14件だった。前年同月比54.8%減となっており、景気が持ち直しているように見えるが、東京商工リサーチでは「人手不足関連倒産は代表者死亡や入院などの後継者難型が中心だったが、人手不足が解消されない中で、求人難型、人件費高騰関連などの推移が注目されている」という。人手不足が倒産に直結するだけに、その対応が重要となっている。
今秋、財務省が発表した「人手不足の現状およびその対応策について」を見ると、中小企業の74.7%が人手不足を感じていると回答。各社の対応策では、新規採用に対する取り組みは採用活動の促進が最も多く、次いで賃上げ、採用要件の緩和、勤務地の多様化と続く。既存従業員に対する取り組みは賃金引き上げ、非正規社員の正社員化、退職者再雇用、定年延長、勤務体系の多様化と続く。
中小企業の取り組み事例を見ると、「保育料の3分の1を助成する制度の導入」(中国地方)や「社員の紹介制度を導入」(近畿地方)、物流関係では「中継地点での高性能の自動仕分け機を導入した」(同、大手)という声もあった。
物流業界の人材不足の背景には、「ドライバーの獲得競争が激化しているため」という指摘もある。「3K」職場というイメージも相まって、人材不足が加速しているようだ。
しかし、同じ3K職場でありながら、イメージアップに挑戦しているのが「工業系製造業」だ。製造業で働く男性を「ゲンバ男子」と名付け、「職場をかっこよくするユニフォーム」の製作では、20代のOL5人も会議に参加し、「異性から見たかっこよさ」を採り入れている。
「ゲンバ男子」の普及を進めているのが、大阪産業創造館。「あえて女子目線を入れた。スタート当時、これは意外にも、どこの業界も積極的にはしていなかった」という。もともと、大阪産業創造館が発行する月刊誌「ビープラッツプレス」の1コーナーだったという。
編集担当の小山広喜氏(写真左)と脚ノ陽子氏(同右)は、「大阪市内の製造業の会社を回っているうちに、『何かできないか』と考えたのが、ゲンバ男子。製造業の男性にスポットライトを当てようという企画だった。最初は『男前を探せ』というナンパな企画でもあった」と笑う。
求人誌などの民間企業とタイアップするうちにメディアにも多く採り上げられるようになっていったという。「かっこいいユニフォームを製作しようと、20代のOLに参加してもらったり、幻冬舎から写真集も出した。これはあまり売れなかったが、いいアピールになったと思う。現在はロゴマークを商標フリーにして全国に広めようとしている。すでにいくつかの行政とタイアップしている」。現在、佐賀県や愛知県春日井市、静岡県浜松市、福岡県北九州市、愛媛県新居浜市などとコラボしている。
「ゲンバ男子の目的は、若年層の採用、業界のイメージアップにつながること」として発信を続けている。2013年にスタートした同企画だが、少しずつ効果が出てきているという。「少し前にアンケート調査をしたところ、女性の応募が多くなったという意見や、記事を見た男性が入ってきたという意見も頂いた」という。また、「製造業以外の業界から『うちも』とオファーを少なからずいただいたが、大阪市の税金を使っているので何でもかんでもというわけには…」とも。
しかし、「どの業界でも抱えている悩みは一緒ということがわかった。ゲンバ女子という企画もあるが、なかなか見つからないのが現状」という。ゲンバ男子はいままで製造業だけで164人(87社)を取材。大阪市内だけでも製造業者は約1万8000者ある。
宅配業界でも「佐川男子」が注目されたこともあり、男性従業員にスポットライトを当てるのは、業界全体のイメージアップを図り、人材不足を解消させる一つのアイデアとも言える。
◎関連リンク→ 大阪産業創造館この記事へのコメント
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