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物流ニュース
認知機能低下への提言 簡易テスト開発の動き
2017年4月10日
「アクセルとブレーキの踏み間違い」や「高速道路の逆走」など、社会問題化している「高齢者ドライバー」による交通事故。運動能力や判断力の低下、さらには認知症(認知機能低下)などが原因といわれているが、有効な防止策が見当たらないのが実情だ。高齢化するトラックドライバー問題として懸念すべき点で、企業の管理責任も大きく問われる。そんな中、運送会社と財団、大学の研究チームが連携して、トラックドライバーの認知機能に関する「評価プロセスの確立(認知機能に関する簡易テストの開発)」を目指す動きがある。
今回、認知機能低下の評価プロセス開発に着手したのが中京陸運グループ(鷹見正彦社長=写真右、名古屋市熱田区)と中京長寿医療研究推進財団(井口昭久理事長、愛知淑徳大学教授)、名古屋大学大学院医学部の研究チームの3者。それぞれの立場や視点で培ったものを結集させ、共同で開発を進めていく。
鷹見社長は「認知症や認知機能低下による事故が一般のドライバーに限らず、今後はトラックドライバーによる可能性も十分に考えられる。管理責任を含めて会社側としても、対策を講じていく必要がある。それはドライバーと家族、会社を守るということ。そして、加害者・被害者をつくらないことにもつながる」と話し、「そこで財団や大学の研究チームの協力を得て、認知症に対する早期発見の仕組みを、まずは当社をモデルに確立していきたい」と、開始した経緯を語る。
現在、高齢ドライバーが増加する中、体調面に関しては各企業で管理が進んでいるが、状況判断を行う認知機能の測定を実施している企業は極めて少ない。この取り組みは、業界や団体に対する提言的な側面もある。
今回、アドバイザー的な役割として、このプロジェクトに加わるのは、名古屋大学大学院教授の葛谷雅文氏(同左)。葛谷教授は、同大学大学院や米国国立老化研究所の研究員として研鑽を積み、現在は同大学大学院の教授で、高齢者医療・老年医学の第一人者として活躍。日本が抱える高齢者医療という課題に対して、研究・臨床の両面からアドバイスをする。
今回、名古屋大学大学院の研究チームの研究課題として、「高齢トラックドライバーの安全対策を目指した認知機能評価プロセスの開発」を同財団に提案。県民の保健向上に寄与することや、長寿医療の研究助成及び県民への予防啓発活動を行っている同財団の目的に合致。今年度の研究助成対象となる見通しで、4月をめどに中京陸運グループに在籍するドライバーを対象に、認知機能検査を実施する予定となっている。
検査とデータ収集の役割を担う中京陸運グループでは、在籍する60歳以上のドライバー(希望者)を対象に認知機能検査を行い、対象者の現状の認知機能の把握や、数ある検査方法の中から実情に沿ったものを、葛谷教授にアドバイスをもらいながら検討するとしている。
鷹見社長は「医療ではないので、アルコールチェックなどと同様、簡単にできるテストを構築しなければならない」とし、今後、集積されたデータを同大学大学院の研究チームに提供。提供されたデータをもとに、会社及び業態としての傾向を分析し、最適なテスト方法を確立していく構え。
「テストをすることで認知症や機能低下の可能性が分かれば、早期の治療が可能。例えドライバーとして続行できなくても、配置転換などで雇用も確保される。本人も家族も安心して働ける。なによりも事故という悲劇を産まなくていい。まずは中京陸運グループからアクションを起こし、モデルケースを確立したい」と鷹見社長。
今後は、同社での研究結果を約1年程度でまとめる予定。まとめられた研究結果は同財団を通じて、愛ト協に提出。これらの取り組みを提言していくとしている。併せて、データ収集の協力と認知機能テストに関する助成金も訴えていく。
鷹見社長は「認知症や認知機能低下による怖さというものを、各企業の経営者にも知ってもらいたい。高齢ドライバーが安心して働けるように、事故のない環境作りが必要。そのためにも積極的に取り組んでいきたい」と、安全への取り組みを加速させる。
◎関連リンク→ 中京陸運株式会社この記事へのコメント
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