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    直言閑言 去りゆく「昭和の社長」、最後まで固定給貫く

    2017年10月23日

     
     
     

     西日本の政令市にある中華料理店に6月下旬の某日、トラックディーラーや燃料販社、ボディー架装会社、損保会社の関係者らが集まっていた。輪の中心にいたのは70歳を過ぎた男性。ドライバー時代の手積み・手下ろし作業で鍛え上げたガッチリとした体型のせいか、まだまだ現役のムードも漂うが、同日の集いは半世紀近くにわたるトラック運送経営にこのほどピリオドを打った同氏を慰労するため、関わってきた各業界の有志が企画したものだった。
     記者自身も同氏とは約20年の付き合いになる。慣れない土地で多くのアドバイスをもらい、同氏を通じて知り合った企業経営者も少なくないだけに残念な思いは強い。ただ、廃業の思いは以前から耳にしており、その経緯や理由を十分に理解していたことで、引き止める言葉を掛けたことはなかった。
     「トラック事業者の要望は何ひとつ実現しない」。4トン車に4トンの荷物が積めるようにしてほしい…という要望は、形を変えて中型免許の誕生につながった。しかし、「それでは例え4トンの荷物が積めたところで高速道路の通行料金が大型扱いになってしまう」という悩ましさを現場に生じさせる結果となった。さらに、今年3月に創設された準中型も「なぜ総重量を8トンにしなかったのか。この500kgの差がどれほど大きいかが、行政にはまったく理解されていない」と呆れる。


     トラック事業にとって懸案の一つである市街化調整区域の問題で十数年前、解除をめぐって市当局とやり合う場面も目にした。「営業所として認められる構造物が建てられないから、5kmも離れた事務所と車庫が合法となる始末。土地の確保が難しい首都圏では同20kmというが、そんな距離を走って点呼に行くわけがない」。プレハブさえ置けない場所に、違法とわかりながらプレハブを置いて事務所としている現状を「なぜ実態に近づけるような柔軟な発想が持てないのか」と、今でいうコンプライアンス経営を意識するがゆえに苦言を呈してきた一人だった。
     「ワシはもうやめるよ」という言葉を口にしだしたのは1年余り前だったと記憶している。「長時間労働の代名詞のようにいわれるが、6日間の長距離運行が認められており、出先でトラックはドライバーにとって自宅のようなもの。ベッドもあるが、そこで寝ても休息にならないのはナゼなのか」と、労働時間の短縮に向けて一段と厳しいルールが設けられ、その対応がマッタなしの状況にあることが廃業を決断させる大きな要因となった。
     「もっと稼ぎたい」というドライバーの欲望と、時期によって荷動きに波があることから賃金を固定化しづらいという経営側の思惑が合致する形で根付いてきた歩合給。しかし、それが現在の厳しい時短規制のなかでドライバーを「働きたくても働けない」状況に追いやる一方、運賃の減収を避けられない経営現場にとっては上昇を続ける最低賃金や、時間外労働に対する割増率の大幅アップに対応できなくなる可能性も膨らんでいる。
     同氏は裸一貫で会社を立ち上げて以来、固定給を貫いてきた。大型トラックで大阪府内の数か所を回り、引き取ってきた食品などを数台の4トン車に積み替えたうえ、手分けして市内のセンターなどへ小口配送するのが主力。積むケースの数量にもよるが、大阪からの大型運賃が20万円を超えることも珍しくなかった。ただ、それには地元で小口配送に使う数台の4トン車の運賃も含まれていた。
     「コキ使うことになるが、それに見合うだけの給料は払う」というのが面接時の開口一番。その覚悟で入社してくるせいか、「意外にやめないもの。手積み・手下ろしの仕事も多いが、稼ぎに来ているドライバーに稼がせるのが自分の役目」と、周辺にある同業他社のドライバーに比べれば3~4割ほど賃金が高い印象を受けた。固定給の悪い面が出ないように、助け合って早く仕事が終わるように手の空いたドライバーの尻も叩いてきたが、「これからは同じやり方で稼がせてやれない」
     燃料や高速料金などの変動費に振り回される事業だけに、車両台数が増えるほど難しいともいわれるトラックドライバーの固定給だが、「安全運転は生活の安定が前提」という信念を崩さなかった同氏。すべての支払いやドライバーの新たな勤務先の手配も終え、付き合いのあった関係者らが企画した「お疲れさま会」で「(自分のやり方では)無理な時代になったということ。肩の荷が下りた」と、去りゆく昭和の社長は潔かった。

     
     
     
     
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