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    物流企業も各地で参画「企業主導型保育事業」 雇用確保に手ごたえ

    2017年9月20日

     
     
     

     多様な就労形態に対応する保育サービスを拡大し、仕事と子育ての両立を支援する目的で昨年4月に内閣府が創設した「企業主導型保育事業」。スタートした平成28年度は、全国871の保育施設に対して国の助成が決定している。物流業界でも十数例が先行的にスタートしており、2年目となる今年度の参画に照準を定める事業所も見られる。同事業の窓口となる児童育成協会(公益財団法人)では「9月29日まで2次募集を受け付けている段階。昨年度は4次募集まで行ったが、あくまで予算の執行状況によるので(追加募集など)今後は未定」(両立支援事業部)と話しており、興味がある企業関係者は注視しておきたい。
     同事業は、従業員のための保育施設を設置する事業所に対して整備費(実際にかかった工事費用の4分の3程度)と運営費(通常の保育に必要と考えられる額から企業の自己負担相当分および、利用者負担相当分を除く部分)を助成するもの。施設を設置した企業で働く従業員の子どもまたは、設置企業と利用契約を締結した事業所の従業員の子どもを受け入れる「従業員枠」に加え、定員の50%以内であれば周辺の子どもを預かる「地域枠」を設けることもできる。
     シティーライン(田浦通社長、福岡県糟屋郡志免町)は今年4月1日、事務所棟の2階部分に「にじいろ保育園」を開園させた。定員12人の施設で、現在は11人を預かっている。「当初は28年度末(29年3月)までに開始する計画だったが、手続きなどに時間がかかってしまった」と保育事業の担当者。


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     ハローワークには一般事務と倉庫内作業、ドライバーの3職種で求人募集を出しているが、いまのところ利用しているのは内勤業務に就く従業員の子ども。「ドライバーは午前8時から午後6時といった1日勤務の形態が多く、なかなか難しい面もある。短時間の業務も含め、柔軟な雇用に対応することも今後の検討材料と考えている」(同)と話す。
     広島市西区に本社を構える双葉運輸(為廣 尚武会長)が本社地内に「ふたばすくすく保育園」(定員19人)をオープンさせたのは7月18日。佐藤成保育園整備担当課長によれば「女性ドライバーの就職希望者も含め、問い合わせは増えている」と手ごたえを感じている。
     また、「奥さんが働きに出るタイミングと重なったことで、以前から勤めている男性ドライバーの子どもを預かることになった」(同)と新規の雇用ではないものの、ES(従業員満足)の向上につながる効果も得た格好。同社では今後、同規模の保育施設を東広島市の物流センターや岡山県倉敷市の事業所内などでも計画しており、今年度内に2県で4施設を開園させる考え。「仕事と子育ての両立支援の方針を求人募集でも前面に出していきたい」(同)としている。
     「一番はES。育休や時短の促進というが、どうやれば本当にみんなが働けるのか。まずは具体的に手を差し伸べられる状況を作ろうということ」(保育事業の担当者)と6月15日、愛知県日進市にある名古屋東物流センターに「SEKAI NO HAJIMARI」(定員12人)を開設した尾張陸運(伊藤敏彦社長、同尾張旭市)。利用者はすべて構内で働く非正規の女性パートの子どもという状況になっており、「もちろんドライバーも対象だが、時間の面で難しい部分があるのは確か」(同)と話す。
     一方、同社は5年ほど前からデイサービス施設も運営する。「近年は介護のために離職する従業員も出ており、育休や介護休という一時的な対策では本当の悩みは解決できない」(同)と説明。また、「働き方改革というが、運送事業は時間に付随して給料が変わる。例えば世帯で500万円くらいの所得を確保するために日中、子どもを預けて奥さんがパートに出る…そういう状況を可能にしたかった」との考えも明かす。
     初年度は全国で871の新設保育園から制度活用の申請が出され、トラック事業など物流業界からも東京や埼玉、新潟、愛知、兵庫、岡山、広島、福岡などの十数社が参画。同事業の窓口となる児童育成協会では「昨年は4次募集まで行ったが、今年は9月29日に締め切る2次募集の後は未定。予算(約1300億円)の執行状況による」(捧智宏両立支援事業部長)と説明。
     28、29年度の2年間で5万人という目標で立ち上げられた事業であり、当初の計画では「運営費は継続されるものの、新規募集(整備費助成)は今年度で終わることになる」(同部長)。ただ、松山政司少子化対策担当大臣が8月15日の閣議後の記者会見で、(当初の5万人から)今年度末までに計約7万人へ2万人分を上積みする追加整備の方針を発表しており、興味がある企業関係者は注視しておきたいところ。また、小規模事業所では運営が難しいとの声もあるが、周辺企業との連携によって同制度を活用し、子育て世代の雇用確保につなげるチャンスはある。
    ■シーアール物流が保育園開設 物流関連では最大規模
     シーアール物流(大久保泰造社長、岡山市北区)が運営する「ちるりら保育園」が1日、同南区にある商業施設「マルナカ築港店」の2階にオープンした。内閣府が昨年4月に創設した「企業主導型保育事業」を活用するもので、物流企業が手掛ける同施設は定員20人までの規模が大半だが、同社の保育園は同60人と業界では最大規模。連携企業として山陽マルナカが名前を連ねている。
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     施設名の「ちるりら」はチルドレン・リラックスを基にした造語で、リラックスした環境のなかで子どもらが過ごせるイメージ。商業施設の屋上の一角にあった既存建物を改装した園内には、広々としたオープンテラスなども整備されている。また、屋上部は買い物客などの駐車場として十分なスペースが確保されており、送迎時にマイカーを安心して止めることができる。
     同社は昨春、社内に「働きやすい環境づくり委員会」を立ち上げた。「より柔軟な働き方」「育児・介護への参加」「育児などの経済的負担の軽減」を支援する制度を設けるなど、働き方の改革を通して経営体質も強化するES向上の方針を明確に打ち出しており、保育園の運営も「どうやれば人が入り、やめずに働き続けることができるのか…というのがプロジェクトの基本」と松帆克敏管理部長(写真左)。
     同事業の提携企業である山陽マルナカも含めた従業員枠と、周辺の子どもを受け入れる地域枠が半々のスタイルでスタート。当初の入園児は26人で、「開園日から当社の最寄り事業所であるイオン岡山LC(同南区)で採用されることが決まった女性も2人の子どもを預けている」(同部長)と話す。
     昨年11月に事業参画を申請して以降、保育士の有資格者で4年間の実務経験もある吉田愛子・管理部未来総務チーム係長(同右)をプロジェクトリーダーとして準備を進めてきた。内勤者に比べ、時間の面で保育施設の利用が難しいとされるトラックドライバーだが、「ワンボックスや2トン車など小口配送の部門には女性ドライバーもおり、今後、求人募集の際に効果的なツールとして活用できると考えている」(同部長)としている。
    ◎関連リンク→ シーアール物流株式会社

     
     
     
     

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