-
物流ニュース
社員寮のメリットとデメリット 改めて注目される理由とは
2017年12月13日
多くの業種で、社員寮を復活させる動きが出てきた。人手不足で採用が思うように進まない中で、福利厚生を充実させて人材を確保する狙いがあるようだ。バブル崩壊後、一時期は社員寮を抱える企業は売却する動きが強まり、社員寮新設に積極的な企業は多くなかった。しかし近年では、おしゃれな社員寮の新築で求職者にアピールする例や、引っ越し代金や敷金・礼金などの転居費用を負担する企業もある。社員寮に再び注目が集まる理由を探ってみた。
求人サイトで「寮完備/トラックドライバー」と検索すれば、多くの求人がヒットするなど、運送業でも求職者に少しでも魅力を感じてもらえるよう、寮完備をアピールする企業は多い。社員寮は、職場の仲間と共同生活を営み、さまざまな部門の社員と関係を築けるという利点がある。近年は若者を中心に、「プライベートな時間まで会社の人との上下関係が続くのは避けたい」という声もあるため、同じ職場の人がご近所さんになりがちな社有の社宅は敬遠され、普通のマンションと同じ感覚で暮らすことのできる、借り上げ社宅が人気を集める傾向にある。
何よりも社員寮のメリットの一つが家賃の安さだ。寮費が1万円というところもあるため、特に社会に出てすぐは十分な貯蓄がない場合もあり、家賃が安く済む社員寮は圧倒的なメリットといえる。
また、悩みを話せる人が近くにいるという利点もある。他地域からの人材でも社員寮があれば呼び寄せやすいので、新人・若手社員を対象とした社員寮の存在は、採用競争力を高める上で大きな優位性をもたらす。
一方で社員寮のデメリットとしては、社員寮ならではの規則などを、わずらわしいと感じる場合があることだ。寮内で見知ったプライベートな情報が、会社で噂話として広まる可能性もあり、居心地が悪くなることが危惧される。また、リノベーションされていない築年数の古い寮は、快適性の面から敬遠されるケースもある。
社員寮が改めて注目される背景には、住まいに関する費用についての考え方の変化がある。一昔前ならば「家賃は月収の3分の1」と言われていたが、「2017年・一人暮らしに関する意識調査」では、約4割の回答者が月収の20%以内が妥当と回答している。
また学生時代に奨学金を借りる人が増え、その返済も抱えていれば、生活は厳しくなる。奨学金を借りる学生は1998年度には約50万人だったが、2013年度には144万人と、15年で3倍近くに伸びている。今や大学・短大生の約4割が奨学金を利用しているというデータもある。奨学金の返済が40歳まで続くという例も少なくはないため、奨学金を抱える若い世代にとって持ち家は「夢のまた夢」ということになる。親と同居する若者の割合が世界中で増えているというニュースが報道されているが、好んで実家にいる人を除くと、費用の面からやむをえず親元に留まる人は少なくない。
非正規社員の割合が増え、正社員でも収入が減ることが珍しくない、不安定な時代を迎える中で、持ち家を得られるのは、仕事も所得も比較的安定した人のみだ。
このような中で、確実にかかる費用を削減できるという意味での社員寮は一番の福利厚生になりうるのではないだろうか。もちろん、社員寮を新築しようと思えば企業側の費用負担は莫大で、中小企業にとっては大きな決断となる。これからの時代、人材を確保していくためには、若者を取り巻く時代背景も考慮すべきかもしれない。この記事へのコメント
関連記事
-
-
-
-
「物流ニュース」の 月別記事一覧
-
「物流ニュース」の新着記事
-
物流メルマガ