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物流ニュース
実用化目指すドローン物流 宅配クライシスの救世主へ
2018年2月8日
EC市場の急成長で宅配荷量が増加するなか、物流業界の人手不足や長時間労働問題などでサービスの維持が困難となっている。こうした問題を解決するため、送料値上げや荷受け量規制など、宅配ビジネスモデルの見直しが進められているが、さらなる対策と時間が必要とされる。そんななか、宅配クライシス問題の救世主としてドローン(小型無人航空機)が話題となることが増えている。
「幕張新都心を中核とした近未来技術実証・多文化都市の構築」をテーマに掲げる千葉市は、国家戦略特区の枠組みでドローン宅配の実用化を目指した取り組みを進めている。同市がドローン宅配に注目した理由について、同市国家戦略特区推進課は「将来人口3万人となる大規模な都市型住宅エリアでもある幕張新都心は、電線の地中化が進んでいることと、多くの物流倉庫が点在する東京湾に近接しているため、輸送ルートの大半が海上などの上空なので比較的安全であるから」としている。
また、元千葉大学教授で、ドローン開発の第一人者である野波健蔵氏が代表を務める完全自律型ドローン技術開発を行うベンチャーの自律制御システム研究所が、幕張に立地していることも理由の一つとなっている。
同市のドローン宅配の実用化に向けた取り組みはこれまで、国の千葉市ドローン宅配等分科会(2回)と実働部隊の技術検討会(7回)を開催。新たな制度や規制改革の検討と実証実験の実施ならびに技術的課題の抽出などを行っている。同市国家戦略推進課によると「実際にワインボトル(720㍉㍑)や市販薬などで、都市部初となるドローンのデモ飛行を幕張新都心の大型商業施設や高層マンションで行って、実験の成果は出ている」としている。
だが、「実際に商業ベースで行うには、都市部の有人地帯で飛ばさなくてはならないため、航空法などの法的な部分と飛距離や重さ、安定性などの技術的な部分でクリアしなければならないことがまだまだ多い」という。幕張新都心の若葉住宅地区では、設計の段階からドローン宅配を想定したタワーマンション6棟(計画人口1万人)の開発が進められているほか、ドローン産業の一大集積地を目指し、ドローン宅配の早期実用化に注力していく考えだ。
千葉市ドローン宅配等分科会技術検討会の構成員である自律制御システム研究所(野波健蔵社長、千葉市)は、自社で開発したドローンを使って、実証実験など技術面でサポート。ドローン物流について同社は「現在、楽天とローソンが福島県南相馬市で移動式スーパーと連携した定期的な物流を行っているほか、日本郵便は局間物流の実証実験などに取り組んでいる」と話す。
また、「2017年1月には、福島県南相馬市で約12㌔㍍の完全自律飛行による物流の実証実験が成功している」とし、「今後、物流分野で更なる普及を加速するには、ドローンの飛行時間の延長、搭載可能ペイロードの増加、LTEなどの長距離電波の開放などが課題になってくる」としている。
ドローン宅配について、「最大積載量や飛行距離など、多くの実証実験を通した技術検証や安全性の確認、また規制の整備など複合的に解決しなければならない課題がある」とし、「ドローンメーカーとして、物流に即した機体性能の開発・安全機能の実装を続けている」という。
一方、ドローンを使った物流についてヤマト運輸(長尾裕社長、東京都中央区)では、社外で開催されるカンファレンスに参加するなど、ドローン技術の活用について検討を進めている。ドローン物流について同社は「業務効率化などの効果が期待できると考えている」とし、「ドローンに限らず自動運転などの最新技術については、安全第一を前提に今後の実用化を期待している」としている。
楽天(三木谷浩史社長、同世田谷区)では現在、2か所で実際にドローン配送を行っている。2016年5月に、初めて楽天ドローン(発表時「そら楽」)のサービスとして千葉県のゴルフ場「キャメルゴルフリゾート」で配送提供を開始。現在も月1回のペースで提供している。今後は他のゴルフ場でのサービス提供も視野に入れている。
昨年10月には、福島県南相馬市でのドローン配送とローソンの移動販売を組み合わせた商品配送の試験運用を実施。課題は「天候」で現在、雨や風などの天候による影響でドローン配送のサービスが提供できない日が発生している。
ドローン物流について、同社は「新たな利便性の提供、物流困難者の支援、緊急時のインフラ構築といった3つの領域を対象に取り組んでいる」とし、「ビジネスだけでなく、社会的意義のためにも活用していく」としている。
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