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物流ニュース
明暗分かれた2つの判決 「労契法20条」が初判断
2018年6月14日
契約社員のドライバーが、正社員にのみ諸手当等が支給されるのは不合理だとして、差額を求めた訴訟と、定年後継続雇用したドライバーの賃金を2割引き下げたことが不合理だと訴えた訴訟について1日、最高裁が判決を下した。両事案は、近年、問題となっている労使間のトラブルで、業界でも、手当の支給における司法の見解に注目が集まっていた。判決は、結果的に明暗を分ける格好となったが、両裁判の違いは何だったのか。また、両判決を受け、事業者が今後取り組む中で、注意すべき点はどこか。弁護士法人ALG&Associatesの執行役員でもある家永勲弁護士に聞いた。
家永弁護士は、両裁判の差異について、「長澤運輸事件では、基本給の引き下げについては、高齢者雇用という特殊性を加味した高裁の判断が是認されているので、この点でハマキョウレックス事件とは異なる」という。ただ、「長澤事件では、高齢者雇用に関して、労働組合との協議を重ねていたことや、退職金が支給済みであること、年金の支給までの調整給が支給されることなどが考慮されている」とし、「高齢者の再雇用だからといって、単純に賃金の減額が許されるとはいえないと考えられる」と話している。また、手当の支給に関しては、「両事件ともに、原則として手当ごとの個別判断がなされている」点を家永弁護士は指摘している。
一方、今回の判決を受け、今後、事業者が重点的に取り組むべきことについて、同弁護士は、「両事件では同一労働であることを前提として、特に手当部分については、転勤や幹部への重用などの仕組みの相違があったとしても、合理的な理由とは認められにくい傾向がある」とした上で、「有期雇用と無期雇用の相違がある場合に、①同一労働にならないように業務内容を見直すか、②手当の支給要件を有期雇用か無期雇用かで分けるのではなく、手当の目的を明確にすることを検討し、目的にあった要件を定めることが必要」だと話している。さらに同弁護士は、「高齢者の再雇用にでも、20%程度の減額ならば許容されるというわけではなく、減額幅が小さくなるように留意する必要がある」と指摘する。
正社員と非正社員の待遇について1日、ハマキョウレックス( 静岡県浜松市)と長澤運輸(横浜市西区)をめぐる2つの訴訟の判決が出た。問題となったのは、労働契約法20条が禁じている「不合理な格差」。最高裁が初めて判断した2つの判決だが、明暗が分かれた。ハマキョウレックスの最高裁判決では、大阪高裁で棄却されたのは「皆勤手当と住宅手当」。契約社員は正社員と比べて「無事故手当、作業手当、給食手当、住宅手当、皆勤手当、家族手当」の支給がないとしていた。今回、最高裁は6つの手当のうち「住宅手当」以外の5つの手当に対して「不合理な格差」と認めた。皆勤手当が認められた理由について「乗務員は契約社員と正社員と職務内容は異なっておらず、出勤する者を確保する必要性は両者に差はない」と指摘。認められなかった「住宅手当」については、「契約社員は就業場所の変更が予定されていないが、正社員は転居を伴う配点が予定されている。正社員が契約社員に比べて住居費用が多額になり得る」としている。
長澤運輸で争われたのは「定年後再雇用の賃金格差」。原告3人は定年退職後、有期雇用の嘱託社員として再雇用された。正社員と同じ仕事だったが賃金を約3割引き下げられたとして提訴した。最高裁は、定年退社者を再雇用する場合、「長期間雇用することを予定していない」「再雇用者は定年退職するまで無期契約労働者として賃金の支給を受けてきた」「要件を満たせば老齢厚生年金の支給を受けることができる」と指摘。正社員と嘱託社員の労働条件の相違が不合理かどうかについては「賃金項目の趣旨により、その考慮すべき事情や考慮の仕方も異なり得る」として、項目ごとに判断するとした。
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