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物流ニュース
高校新卒採用の心得 教諭とのパイプ作りが重要
2018年6月28日
社会の高齢化や少子化などを背景に減少していく労働力の「奪い合い」は今後、加速度を増す様相が懸念されている。新たな人材の迎え入れや掘り起こしが運送業界のみならず、各業界の必須課題となる中、6月1日から高校卒業予定者採用に向けての事業者受付が始まった。事業者が新卒者を迎え入れるための準備と心得とは、いったいどのようなものだろうか。
日本における人材採用活動は、例外はあるものの事業者が自ら(広告代理店など他社を利用する場合も含む)行うか、公共職業安定所(ハローワーク)を利用するかに分けられる。
厚労省の発表する一般職業紹介状況を見てみると、平成30年3月の有効求人倍率(季節調整値)は1.59倍で前月比を上回り、過去1年を見ても高水準で「安定」。同29年度平均を見ても1.54倍で前年比0.15ポイントの上昇を示し、リーマン・ショック直後の同21年度の0.45倍と比較するとおよそ3倍に増加していることからも、採用活動について事業者は、より積極的な行動が求められそうだ。
1日から受付が開始されたハローワークによる高校卒業予定者を対象とした、事業者からの求人票申し込み受付は通常6月いっぱいまで「仮受付期間」として行われ、7月から採用活動が「解禁」される。
ハローワーク名古屋中の田中清仁次長に話を聞くと、求人票の受付自体は、その後も続けられるものの、採用の動きに関しては7月の解禁で一気に活発化するため、有効な新卒採用を行うには6月の仮受付期間での求人票提出が必須だと言う。また企業の窓口となる高校側の担当教諭とのパイプ作りが何よりも重要とのことで、事業者が活動を開始するにはハローワークからも一定の審査を受ける形となるが、大切な生徒を送り出す責任が伴う高校の担当教諭からは労働環境や社風、離職率に至るまで、さらに現実的でシビアなチェックを受けることになると同氏は語る。
「高校の先生との関係は時間をかけて築いていくもので、すぐに信頼を得られるものではない」
田中次長の言葉を聞いて、思い出した事業者が三重県のカワキタエクスプレス(川北辰実社長、亀山市)だ。今年4月に高校新卒の新入社員5人を迎え入れた同社では、継続的な新卒採用活動を10年ほど続けており、その間、高校側の担当教諭との交流と親睦を深めてきた。先のデータに見られたように求人数が極端に落ち込んだリーマン・ショック直後の就職活動でも同社は先生とのつながりを切らせることなく採用活動を実施。
またライセンスアカデミー(白田康則社長、東京都新宿区)が主催する高校教諭との懇談会にも積極的に参加して交流の輪を広げ、ブログやメルマガなどの発信を通じて存在感も示すなど、自社の信頼度を高める努力を地道に行ってきた。先生との交流や意見交換を継続していく活動は、企業側の求める人材と高校側が推薦する人材との間で生じる「ミスマッチ」を防ぐという大きな効果もある。
今年入社した5人について、同社長は「期待を上回る活躍ぶりで驚いている」と評価。長年続けてきた新卒採用(現在では全社員の三分の一以上が新卒採用者)が社内での環境整備や育成ノウハウの蓄積を促進させたことが、現状につながっていると実感させる言葉だ。
ハローワーク名古屋中の田中次長は高卒採用者の今後について、新卒就職者で中卒の7割、高卒の5割、大卒の3割が3年以内に離職してしまうという「七五三現象」に代表される定着率の低さを課題として挙げ、職場体験や説明会などを通してしっかりと自社の労働環境を知ってもらうと同時に、互いが理解する機会を設けていくことの必要性を指摘。さらに昨今の求職者はライフワークバランスを重視した「安定志向」であることにも触れて、今後、新卒採用を検討している事業者に提言していきたいとしている。
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