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物流ニュース
労災防止への取り組み 死亡・死傷災害が増加傾向
2018年7月2日
陸上貨物運送事業における労働災害の発生状況は本紙6月18日号で既報したとおり、陸上貨物運送事業の需要の増加を背景に、死亡災害や死傷災害とも増加傾向にある。そうしたなかで運送事業者は、どのような対策を行うことで労働災害を防止することが出来るのだろうか。専門家の考えと、実際に対策を行っている運送事業者に話を聞いた。
安全衛生教育研究所(髙﨑義明代表理事、千葉県市川市)の労働安全衛生教育アドバイザーである髙﨑親一氏は「企業はお金を稼ぐために存在しているため、『安全にかかるお金は経費ではない』という考え方をしてしまう」と指摘する。だが、「実際に労働災害が起きると膨大な費用がかかってしまう」とし、「生産性を上げたいのであれば、安全を第一に考ええる必要がある」という。つまり、経営者の意識にかかっているのだ。
労働災害防止の基本は法令順守にある。これをしっかり守ることで、労働災害は3分の1程度に減らされるといわれている。続いてガイドライン順守、交通危険予知の教育、ドライブレコーダー、タコメーターが重要となる。意欲を持って取り組んでいるところは、実際に事故の発生も少ない。他業界ではあるが、東レの千葉工場では7年間も無事故・無災害が続いている。責任者の意識が高く、全体で取り組んでいることが結果となっているという。
書籍や食品などの輸送をはじめ、倉庫管理などを行っているアベサービス(阿部薫社長、埼玉県川越市)では、10年近く大きな労働災害は発生していない。同社では10年前に、見習い期間中の女性による転落事故が発生したことがある。軽い怪我だったがそれ以降、労働災害防止に力を入れている。現在は、新人が入るとしっかりと時間をかけて、研修や安全講習を行っている。
また、荷主からも毎回、安全面に関する書類がファクスで送られており、ドライバー全員に必ず読ませて、意識付けを行っている。取引先の荷主も、労働災害防止の意識を持っている。このほか、年に2回講師を呼んで安全大会を行うなど、ドライバーをはじめ管理者まで社員全体で、安全に対する意識付けを徹底。そのため、10年近く、車両や倉庫内での大きな事故は起こっていない。
生コンクリートの運搬をメインに、建設資材の搬入や青果物の運搬を行うアライアンス・コーポレーション(今村雄治社長、東京都大田区)では最近、ミキサー車からドライバーが滑落する事故が発生。全治半年と長期にわたる戦力ダウンとなった。今村社長は「業界では起こりうる事故ではあるが、当社で実際に起きたのは初めて」とし、「事故が起きないように会社で指導や教育を行っていたものの防ぐことができなかった」という。
ルールを守らなかったために起きた事故ではあるが、同社では、そのルールを守らせることができなかったことに問題があるとしている。「事故は会社にとって大きな戦力ダウンだが、本人にとってもダメージが大きい」と今村社長。この事故を機に、その場だけのルールではなくて、一人ひとりにしっかりと意識付けすることの方が重要だと認識するようになったとしている。健康起因の事故も増えていることから、同社では「健康企業宣言」も採り入れるなど、労災防止に積極的に取り組んでいる。
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