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物流ニュース
ワコール流通 作業標準化で効率化図る、動画撮影し分析
2018年8月22日
ワコール流通(牧邦彦社長、滋賀県守山市)は2000年4月にワコールグループにおける物流専門会社として別法人化され、物流業務の改革と、3PL事業会社に成長することを目標としている。同社では2018年4月現在で898人の従業員が働いている。守山流通センターの年間取扱内容(同年3月期)は全社で50%分にあたる取扱数量4000万枚、値札付け数量1150万枚、発送個数76万枚となっている。人手不足や長時間労働などが課題となる中、同社が取り組む物流の効率化および、業界全体の改善に向かうためには何が必要なのか、話を聞いた。
「ワコール流通では、入荷・返品・検査・在庫・ピッキング・値札・出荷・返品・配送などを一元管理している。さらに、販売店とはオンラインで結ばれ、入荷情報や在庫情報、作業進捗情報がリアルタイムで共有することができ、販売活動に活用されている」と話す牧社長。「統合物流システムの活用で生産性と実績管理に加え、顧客とのEDI(電子データ交換)による効率化にも対応可能な機能を備えている」と同社の物流システムについて解説する。「月次棚卸しを行い、大量のSKUを単品で管理し、高い精度を保っている」という。
出荷作業では、年間約760万ケースを発送しており、「『JAICS-L』というシステムを活用し、送り状レスで出荷している。各運送業者の区別なく、出荷するケースをハンディターミナルでスキャンするだけでデータが反映される」と説明する。
「JAICS-L」の導入効果について、「出荷作業時間が以前に比べ50%削減。集荷作業が、以前は1時間程度要していたものが10分程度で完了できるようになった。それに伴い、出荷作業に必要な作業員数も半分で済むようになった。これらには作業スペースの有効利用の効果が出ている」と説明する。
業界で、人手不足・長時間労働・コンプライアンスの取り締まりの強化が進む中、同社では、「個人別に作業手順を動画撮影し、一人ひとりの生産性の違いを分析する。また、現場メンバーでミーティングを開き、全員で共有する。そして、最も効率の良い手順を標準モデルとして確立させる。そうすることで、ベテランと新人の仕事成果の差を縮めていく。さらに、動画マニュアルを作成し、標準モデルを定着させる」と徹底した効率化を図る。
作業現場からは、「言葉にしにくい部分を写真で表現できるのでわかりやすい。動画で見ると改めて作業内容が確認できた」といった声が聞かれる。マニュアルの作成者からも「スマホで撮影した写真・動画を同じ端末で加工処理でき、時間がかからない。また、思いついたら即座に実行に移せる」と好評だという。同社では、この取り組みで、マニュアル作成時間の80%の削減に成功している。
また、輸配送ルートの合理化や共同配送、モーダルシフトにも積極的に取り組む同社。「あらゆる無駄を省いて、生産性を高めていく」と牧社長は語る。
さらに同社では包装材料についても内装箱の統一を実現。「工場から入荷する商品の内装箱を複数種から1種類に統一することで、資材コストの削減と商品保管効率・補充作業生産性の向上をめざす」と話す。
グループ内SCMの改革では、「フォワーダーの再編(各レーン別のフォワーダー統合)、貿易業務の内作化(通関での渉外立会い)、また、異業種国際共配の試行や、コンテナラウンドユースの拡充、バン・デバンの合理化などにも取り組むとする。
人材の育成にも注力し、体験型インセンティブと連動した制度を導入。「百貨店様のバーゲンセール業務に応援を出し、限界まで速い現場をみせることで現場の意識も様変わりする。荷主との交渉も若手に担当してもらう。最初はうまく進まないが、経験を重ね、慣れることで形になってくる」と話す。
最後に、アパレル物流全般への提言として牧社長は、「パレットサイズなどの各種規格の統一化のために、産業間連携を深めることで、更なる共同化をめざすことが必要。労働人口が減って、物流品質の維持が難しくなるのは目に見えている。今後の物流業界のためにも、各種業界が手を取り合わないといけない」と語った。
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