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物流ニュース
注目されるインタンク メリット多いがリスクも、日々の点検で対策を
2018年8月24日
軽油価格の高騰やBCPの点から、近年再び注目される自家給油設備(インタンク)。運送事業者や協同組合にとって身近な存在だが、多くのメリットを享受できる一方で、管理を怠ればリスクを抱えることにもなりかねない。
インタンクのリスクが注目されたのは8年前の平成22年に施行された消防法の改正がきっかけだ。当時、インタンクを含めた給油施設の地下タンクが経年により腐食・劣化し、全国的に流出事故が相次ぎ社会問題となった。事態を重く見た消防庁は検討会を設置。消防法を改正し、漏洩対策が義務化された。対象となったのは「地面に直接埋設」した「鋼製一重殻タンク」。埋設年数やタンク表面への塗装の種類、設計時のタンクの板厚(厚さ)に応じて講じるべき流出防止対策が規定された。対策の義務化で、タンク本体からの流出事故については近年、減少傾向にある。しかし、流出事故の発生件数については依然として高止まりが続いている。消防庁発表のデータでは、平成29年度の流出事故は369件。改正消防法が施行された翌年の同23年が396件と大きな変化は見られない。産業構造の変化に伴い、ガソリンスタンドや危険物施設の数は右肩下がりだが、事故件数の減少は限定的だ。
「大規模な流出事故は減少傾向にある」(消防庁担当者)が、事故が発生した際の被害や影響は決して小さなものではない。関東地方のある協同組合の事例では、組合所有の自家給油施設の地下タンクに地下水が混入する事故が発生した。幸いなことに、組合の対応が迅速であったため、大きな被害には至らなかった。
原因を調査したところ、地下タンク本体につながる配管部分に劣化と腐食が見つかった。設置から27年と比較的若い設備だったが、設置場所は地下水の水位が高く、雨水が溜まりやすい地質だったことも影響した。インタンク自体がコンクリートによる二重殻となっていたため、油類が外に流出するという事態は免れたものの、配管の入れ替えや、汚染が懸念される施設内の土砂の廃棄、水が混入した車両への補償など、総額で2000万円近い出費となった。同組合では、施設の定期点検はもちろん、油類の在庫管理や日常点検を欠かしていなかったが、破損を事前に把握することは困難だった。
万が一、軽油やガソリンの流出事故となれば、その被害額は跳ね上がる。土壌汚染や水質汚染となれば莫大な回復費用がかかるためだ。全国危険物安全協会(東京都港区)によれば、「流失事故発生時の被害額は1000万円から2000万円、周囲に農地などがあれば、3000万円ということもある」という。さらに、河川への流出となれば規模によっては億単位に達する費用がかかることもありえる。その上、会社の信用失墜にもなりかねない。
では、事故を防ぐにはどうすればよいのか。消防庁危険物保安室は「対策が必要な設置年数に達したものはライニングなどの対策をほどこし、余裕があれば、配管についても交換を」と呼びかける。漏洩対策を行ったタンクについても継続的なメンテナンスが必要となる。また、事故の早期発見には、「日常的な在庫量のチェックなど、日々の点検が有効」と指摘する。
抜本的な対策は設計の古いタンクなどを交換することだ。近年では腐食に強い硬質塩化ビニール製の配管など、新しい素材も登場している。さらに、従来の地上型タンクと異なるコンボルト型タンクという新たな選択肢も登場している。
同型のタンクは北米を中心に普及しており、国内では防衛省の関連施設などで導入実績がある。北米では、1970年台後半に、地下タンクの腐食による漏洩事故が多発。土壌や地下水汚染など環境問題が顕在化し、地下タンク管理責任者への浄化責任、損害賠償責任が義務化されたことを受け、地上設置式タンクへの移行が進んだ。コンボルト・ジャパン(沖縄県うるま市)の代理店であるシゲミコウキ(神奈川県横浜市中区)は「地上設置式のため、借地での対応や移転がしやすい地下タンクとは異なり、法定点検が不要などメリットがある」と説明する。
運送事業者にとってメリットの多いインタンクだが、メンテンスを怠れば双刃の剣にもなりかねない。腐食や劣化を放置し、事故が発生すれば、タンクの交換費用以上の浄化費用や損害賠償が発生する可能性がある。メンテンナンスと日々の管理には手を抜かないことが肝要だ。
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