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物流ニュース
飲酒運転根絶へ 事業者はさまざまな取り組み
2018年9月26日
昨年の事業用トラックにおける飲酒運転事故件数は28件で、過去5年間で最低となったが、平成28年は過去8年で最悪となる37件となっている。同24年まで順調に減少傾向にあった飲酒運転事故件数は頭打ちとなっている。プロドライバーとして、絶対にあってはならない「飲酒運転」について調べた。
飲酒運転防止に向けてアルコールチェックが義務付けられているが、運送事業者はそのほかにも様々な取り組みを実施している。全ト協の飲酒運転防止対策事例によると、管理者によるパトロール指導(休憩地点や中継地点で服務状況を確認)や運転室内の点検(室内の整理整頓を含めて、酒類の缶やビンがないかをチェック)、運転記録証明書の取得による事故歴・違反歴のチェック、手紙・チラシなどによる従業員の家族への呼びかけなど、さまざまな取り組みが進められている。
しかし、プロドライバーによる飲酒運転は根絶できていない。福岡県北九州市では、中型トラックを運転するドライバーが泥酔状態でコンビニ内の車両やフェンスに激突。ドライバーは配送業務を終え、事務所に戻るところだった。
働き方改革で長距離輸送のフェリー利用が見直されているが、大阪府内で発生した、死傷者3人のトレーラとタクシーの衝突事故では、トレーラの運転者が過失死傷や酒気帯び運転の容疑で送検されている。同ドライバーは事故直前まで乗船していたフェリー内で飲酒していた。コンビニで焼酎などを購入し、フェリー内で水割りにして飲んでいたという。「酔いはすぐにさめる」とも供述している。
鹿児島県では、東九州自動車道で大型トラックが横転する事故が発生。ドライバーは酒気帯び運転の現行犯で逮捕されたが、「サービスエリアでの休憩中に缶ビールや焼酎を飲んだ」と供述している。大型トラックは中破炎上している。
アルコール薬物問題全国市民協会アスク「予防にはアルコール教育」
アルコール薬物問題全国市民協会アスク(東京都中央区)では、飲酒運転の防止について、「予防のために社員へのアルコール教育を行う。多量飲酒を奨励するような職場風土がある場合はあらためる。酒気帯び検挙が起きた場合は一発解雇ではなく、初回は停職などの処罰にとどめ、アルコール専門機関への受診を義務付ける。なぜなら、飲酒運転をした社員を職場から排除しても、その人の飲酒習慣が変わらない限り、飲酒運転は続く」としている。
「酒酔い運転」をした場合、無条件で免許取り消しとなり、欠格期間は3年となる。プロドライバーとしては致命的だろう。そもそも飲酒運転をする人間に、トラックを運転する資格はない。業界をあげて飲酒運転の根絶に取り組みたい。
記者の目「飲んだら運転しない」
「お酒を飲んでクルマを運転してはいけない」。これは小学生でも理解できる。飲酒すると脳の働きが麻痺し、運転に必要な情報処理力、注意力、判断力が低下してしまう。平成18年8月に福岡県で幼児3人が死亡する重大事故が発生し、社会問題となった。それを経緯に飲酒運転厳罰化や行政処分強化が実施された。
しかしそれでも、飲酒運転事故はなくならない。誰でも理解できる「お酒を飲んだら運転しない」ということが守れないのだ。しかも、運転のプロであるトラックドライバーが守れていないようだ。自社のトラックが休憩するサービスエリアやパーキングエリアに見回りに行くのも、「休憩中に飲酒するかもしれない」というおそれがあるからだという。
ドライバー教育を続けても飲酒運転がなくならないのであれば、トラックのロボット化、自動運転化しか道がなくなってしまう。中国の自動配車アプリの大手は自動運転の技術開発を加速させて交通事故の抑止をめざしているが、「機械は疲れたり、スマホをいじったり、飲酒したりしない」からだという。
一部の質の悪いトラックドライバーのために、業界全体のドライバーが悪く見られることもある。「お酒を飲んだら運転しない」。これを理解できない人間はハンドルを握る資格がない。
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