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物流ニュース
整備士不足の現状 経営に支障、長時間労働や是正勧告
2018年11月12日
昨今、整備士不足が叫ばれて久しく、すでにディーラーはパンク状態。長時間労働、長い残業時間が原因で是正勧告を受けるケースもあるという。そこには整備士不足だけでなく、トラックを整備に預ける側の問題も根強く残っていることが取材を通して浮き彫りとなった。整備士の現状、若手整備士の雇用について、そして事業者の対策を取材した。
日本自動車整備振興会連合会の資料「自動車分解整備業実態調査結果の概要」(平成28年度)によると、全国に自動車整備士が約33万人いるという。平均年齢は44・3歳、女性の割合は全体の3%程度。約5割の事業場で整備士が不足しており、その約1割の事業場がすでに経営に支障をきたしているという。
整備士不足について、福岡県自動車整備振興会(福岡市)の井上収平部長に話を聞くと「問題の解消には賃金を、いかに上げていくか」にある、と指摘した。「今後、電気自動車への移行が進めば整備需要も大きく変化する。現在は外国人の技能実習制度による受け入れも活発なため、徐々に問題解決ができれば」と語る。若手人材確保のため、高校を訪れての出前授業や技能競技大会を実施し、一般の人にも見てもらうことで広く周知活動を実施している。
また、整備士を目指す生徒を持つ第一自動車大学校(同)の松尾聡氏によると「3Kがつきまとい、若者の目には魅力的に映っていない現状を感じる」としながらも「留学生が約半数ということもあり、外国人採用に注力する傾向。ただし、多くは日本での就労の後には母国へ帰っていく」とし、必ずしも解決につながる手立てではないことも事実だ。
匿名という条件で話を伺ったディーラーでは「残業時間について指導を受けた」と述べ、「現在は出張整備を行っていないため、ある程度は改善されているが、整備士による長時間残業は常態化している」という。「以前と違い、安全装置など様々な電子化された部品があるため、従来の整備士では対応できない部分がある」ことも要因として挙げ、「複雑な場合、その対応ができる整備士が工場に1人いればいい方、という所もあるようだ」という。その一方で、「トラックが壊れた、明日までになんとかしてくれ、というオーダーがあることも事実。部品が取り寄せにならない限り、対応することも少なくない」という。定期点検は事前に日時を決定することで正常に回せるが、故障・修理となると別で、まさに一般的に叫ばれている荷主と運送会社の構図と同様である。
こうした動きを見越して動いた事業者がある。福岡市でアスファルト輸送をメインとするレキウン(吉川信長社長)だ。このほど、UDトラックスから4トンのサービスカー導入を行った。中には最新式のタイヤチェンジャーやエアコンプレッサーを備え、整備を行うスペースも確保した。さらに、有事の際に備え、電源車としても使えるよう2基の発電機も設置した。「災害時のスマホ充電、消費電力の少ないLEDを使用することで夜間でも明るく、熱もこもらない」といい、夜間作業だけでなく、災害時でも使用できるように設計されている。240馬力のオートマ車とあって、多少の悪路にも対応でき、誰でも操縦可能なところもポイントだ。「特定の人しか運転出来ないのでは緊急時を想定したサービスカーとして不十分」と語る同社長。
「何か起こってから対処するのではなく、何が起こるか予想した上で動くことが必要だ」と語気を強めた。
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雇用する側の意識改革をしないと整備士はどんどん減っていく一方です。実際、雇用する側が
安い給料でこき使えれば良い、それが嫌なら辞めればいいと言ってるくらいですから、そんな状況では仕事する気にすらなりません。国家資格も自動車運転免許と同じくらいの価値としか思われていません。持ってて当たり前だそうです。先ずは根本から変えていかない限り何も変わらないもしくは悪化していく一方です。
長時間労働低賃金は論外です。かと言って長時間で高賃金を望んでいるわけでもない。
賃金はほどほどに、私生活を尊重し仕事に占有されない人生を目指す傾向があります。
国家資格なのに雇用面で扱いが悪い、そして国家資格ゆえに厳重な責任を負うとあっては担い手が減るのは当然でしょう。
待遇改善と同時に自動車整備士という資格の価値を上げる、社会的な意識改革を実現しない限り金銭的な面だけでは根本的な解決はできないと考えます。