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物流ニュース
ウィン−ウィンの関係にあるいま 標準運賃の意義
2018年11月29日
貨物自動車運送事業法(以下、「法」)の63条に定められる「標準運賃」の設定、公示が俎上に上ってきた。各地方運輸局が2003年まで公示の対象としていた上限︱下限(「原価計算の添付が省略できる範囲」)を定めた運賃表が廃止されて以来、すでに15年間以上が経過。近年は乗務員不足を背景とする形で、スポット運賃をはじめとした市場運賃の上昇が見られる局面に入った。経済のデフレ局面には、運賃が底を伝いながらなお下降を続けても「それでも走るトラックがある」との認識から、議論が雲散霧消していた。「それでも走るトラック」を踏み台にして、独りでのし上がるような形ではない「ウィン—ウィン」の関係が醸成されつつあるいま、標準運賃の意義を考えたい。
11月上旬に開かれた兵ト協(福永征秀会長)理事会。「法の一部改正(案)について」と題して提出された資料を前に福永会長は、「全ト協は、議員立法で事業法改正に動いている」と述べた。資料には、「標準的な運賃の公示制度の導入」の文言が。また、「働き方改革関連法で規定されるトラック運送業への適用猶予期限(5年)と同じ期間とし(以下略)」ともある。5年間の間、公示された標準運賃をベースとする形で、トラック乗務員を確保すべきとの主張がにじみ出た文面だ。
福永会長は理事会の場で、「(トラック)議員連盟の間では受け止めていただいている様子だが、厚生労働、経済産業などの省庁からはクレームがある状況。それを調整している」とも述べた。法は現在のままでも、標準運賃の設定、公示を排除していない。63条には、「運賃及び料金が(中略)著しく高騰し、または下落するおそれがある場合(中略)特定の地域を指定して(中略)期間を定めて標準運賃及び標準料金を(国交大臣が)定めることができる」とある。
前出の兵ト協の会議で出された資料の文言の趣旨と63条の大きな違いは、「特定の地域」を定めるか否か、だ。資料には「特定の地域」の文言はなく、全国的な課題となっている「ドライバーの労働条件を改善」(資料中)しなければ再生産可能なトラック運送事業が成り立たない、との認識がベースだ。議員立法による法改定や調整は、こうした点を、どのように現行法と整合していくかが焦点、と見られる。
「標準運賃制度」の場面で、懸念材料とよく言われるのは、独占禁止法との兼ね合いだ。国交省が民間有識者を集めて12年に開いた「最低車両台数・適正運賃収受ワーキンググループ」の報告書には、「(旧認可運賃のような形態に)国が関与することについては、独占禁止法との関係を踏まえ、慎重な対応が求められる」とある。しかし、公正取引委員会は本紙取材に、「独占禁止法の除外規定を公正取引委員会とすりあわせしさえすれば、国が運賃を以前のような形で設定することは可能」(同委員会経済取引指導官)と再三にわたって回答。トラック運送産業に限らず、再生産可能な事業運営が社会的な要請と合致するといった理屈を持ち出すまでもなく、標準運賃の設定は可能だ。
03年まで各地方運輸局が設定・公示し、地元ト協などが事業者に配布していた「原価計算の添付が省略できる範囲」。西日本のあるト協は今でも、上限︱下限運賃表や、「昭和55年」からの「基準運賃」表をホームページ上で公表対象にしている。
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