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    未払い賃金請求問題 弁護士に現状と対策を聞く

    2019年3月20日

     
     
     

     運送業界は、他の業界に比べて拘束時間が長時間化しやすく、労働時間の実態把握が困難なこともあり、残業代未払い請求など労務トラブルが多い業界といわれ、請求金額も高額となりがちだ。今回は専門家に、残業代未払い請求の対策と現状について話を聞いた。

     よつば総合法律事務所の三井伸容弁護士は「最近の傾向として、残業代に関する取り決めなど、そもそもの契約内容に関わるトラブルが散見される」としている。同氏によれば、いまだに雇用契約書をはじめとした書類整備ができておらず、口頭で説明を済ませてしまう企業もあり、こうしたケースでは労務トラブルとなった際に大きな金銭的痛手を被りやすいという。中には、経営者が請求額を見て「実際に働いた時間以上の請求額ではないか」と疑ってしまうような事例もあるそうだ。

     こうした背景もあり、同氏は訴訟トラブルに発展する雇用契約・賃金規定・労務時間管理制度などの整備を勧めている。また、整備と同時にデジタコデータをはじめとした労働時間の定期的な確認も推奨している。

     同氏によれば、これらを推奨する理由は2つある。1つは労務トラブル自体の防止だ。労務トラブルに関係する請求は他者へと波及しやすく、トラブルが終わったと思っていても、第2、第3の請求が発生する可能性が高いとされる。

     もう1つが、トラブル発生時における準備の差だ。同氏は「会社に対して訴えを起こす従業員側は、おおよそのケースで請求の準備を終えてから行動に出る。対して会社側は、普段からトラブル防止に向けた社内整備を行っていないことが多く、準備不足の段階で突然の対応を迫られる。この差は大きい」と話す。またトラブル解決に向けたコストについても「金銭的な負担という観点から見ても、労務トラブル自体への対応コストは非常に大きく、普段の対策にかかるコストと比べてもその差は大きい。一人目の訴訟が起こらないのが一番良い」としている。

     杜若経営法律事務所の岸田鑑彦弁護士は、最近の残業代未払い請求について「請求件数が少なくなったという感覚はない」とし、さらに「今までは、すぐに転職を繰り返すような人からの請求が比較的多く見られたが、一定以上の年数を経た社員が退職する際に、請求していくケースも見られるようになってきた」と分析する。

     なお、こうしたケースの中には、退職を希望した際に無理に引きとめる、または過去の仕事の失敗に関わる弁償金を請求するといった行動を会社側が取った結果、自衛の手段として残業代を請求されたケースも含まれているという。

     同氏は「ドライバーも薄々、残業代が払われていないことに気がついている。辞めた後の転職も、人手不足の影響もあり、より良い条件の職場へ移りやすくなっている」としている。請求が行われた地域については「都心部よりも、地方の営業所などで起こるケースが増えてきた。全国的に残業代未払いを担当できる専門家が見られるようになったのでは」とも指摘する。

     こうした中で同氏は労働時間・給与の管理を勧める。例えば、給与については、会社・従業員共に給与の支払い方法・賃金規定が明確に意識していないケースが散見され、従業員側から「本来なら、より多くの給与が出ていたのでは」といった疑問も持たれやすい状況にあり、この不和は労務トラブル・請求に発展するきっかけとなる可能性が高いという。賃金規定・契約書、さらに給与明細など残業代算出方法を明確化させて業務内容に適したものとし、給与の算出方法を会社側から社員が分かるよう伝えることが重要だという。

     同氏は「社員全てが理解できる内容とし、明確なルールを共有し、給与明細などの項目に十分に反映させることが重要。特に給与明細はトラブルの元となりやすいので注意が必要」としている。

     労働時間については待機時間・休憩時間の明確化を勧めている。裁判でもタコグラフを参考データとして確認することが多く、重要度は依然として高いままのようだ。会社側からも、次の作業時間・入庫時間などを把握した上で、それまで休憩の指示を出すといった行動が望ましいという。

     なお、デジタコには自動的に休憩・待機などに切り替わるモデルも存在しているが、同氏は「当人が、自分の意思で記録ボタンの切り替えを行ったことが重要であり、自動切り替えによる記録は実態と異なるとされる可能性がある」と、裁判で、記録されたデジタコデータが証拠として機能しない可能性を指摘する。

     こうした背景を踏まえ、同氏は「定期的に書類を確認し、ボタンの押し忘れなどに該当している箇所がないか確認することを勧める。仮に裁判となったとしても、会社側からボタンの押し忘れを何度も注意されていた人物となれば、裁判での印象も異なったものとなる可能性がある」としている。

     同氏に行ってはいけない例を質問すると、「運転日報の破棄」「本人以外の窓口を指定されてもなお、直接交渉を行うこと」と教えてくれた。

     前者については「保管義務に加え、運転日報がないことが、裁判では後ろめたいことがあるのではといった疑いの原因になりやすい。すぐに運転日報を提出できない企業が不法行為を問われる可能性もある」とし、後者については「請求があった時点で本人を直接説得できる可能性は低い。問題が長期化し、他の社員へトラブルが波及するおそれもある」としている。

     
     
     
     
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