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物流ニュース
許可取消に実効性は? グループへの車両移管、処分及ばず
2019年5月16日
「許可の取り消し処分って、グループ会社のある企業に対し、実質的に何のインパクトが与えられるのか」。グループ全体でトラック1千台以上を保有する「西部運輸グループ」の関東西部運輸に対し、関東運輸局が4月に事業許可の取り消し処分を出した。同社及び同グループに限らず、取り消し処分を受けた事業者への「実効性」の疑念が、同業者の中で渦巻いている。トラック台数×停止日数で表す「日車数」を付せられて車両の停止処分を受けるよりも、処分対象の事業者にとっては実質的にインパクトが少ないのではないかという疑念だ。処分した関東運輸局は、本紙取材に「制度上そうなっている」と答えるにとどまっている。
関東西部運輸に対する処分が、主に労働時間の超過に起因するものだったことから、長距離輸送事業者を中心に、「『働き方改革実行元年』の、このタイミングに合わせて処分を出した」との憶測が飛び交う。
そんな中、許可取り消し処分そのものの実効性はあるのかと問うのが、近畿地方の事業者だ。事業者は、「処分の内容はあくまで『許可の取り消し』の一点だけ」と指摘。そのうえで、「処分を受けた翌日、いや即日にでも保有トラックを第三者に転売、もしくは保有権原を移す契約を結ぶ。その契約自体は、財産の処分権のある所有権の付いたトラックでは、できないはずはない」。つまり、所有権を含めた保有権原を移す民間の契約は、許可取り消し処分によって禁じられていなければ、当然に有効となるとの見方だ。
ただ、そうした契約が容易に成立してしまうと、ことグループ会社のある事業者などでは処分そのものの意味がほとんどなくなってしまう。近畿の事業者は、「車体番号と照合することで、第三者であっても少なくとも緑ナンバー登録は一定期間できなくするような措置が必要のはず」と指摘。また、「そうでないと、日車数を付した車両停止処分よりも実質的には軽い処分になってしまう。違反点数の大きい事業者に懲罰的に与えられる許可取り消し処分が、違反点数の軽度な車両停止処分を受ける事業者より軽くていい、というのはどう見ても矛盾」と話す。
こうした指摘に対し、平成28年5月から今年2月までに、同様の法令違反事案があった関東西部運輸以外の2事業者に対して許可取り消し処分を行ってきた関東運輸局・自動車運送事業安全監理室の担当者は、本紙取材に次のように答える。
「許可取り消し処分を受けると、事業用の車があること自体がおかしな形になる。自家用への転換、もしくは自社名義以外のものにする必要がある。そうしたフォローの調査をしている」
「(車台番号照会などで緑ナンバーにできなくするような形の)車に対する処分は、許可取り消し処分の場合は、ない」
そうした法的枠組みの中、許可取り消し処分に実効性はあるのか。同担当者は、「別会社に車が移っても、グループ会社であれば同様の違反がありうる。移管後の法令違反を確認していくことが重要になる。車の移管先までを決めてしまうような処分権限は、ない」。ちなみに、車庫用地や事務所建屋の使用権原に対する処分も当然になく、グループ会社への移管契約があり、かつ事業許可基準を満たす限りでは、グループ会社の一営業所を名乗った事業運営も法的には可能だという。
担当者は、「許可取り消し処分にした事業者の車を自家用に戻したりするかどうかのフォロー調査はしているが、調査そのものの法令上の根拠はない」とも話す。過去2件の取り消し処分事業者のフォロー調査を実施しているか否かに関しては「答えられない」としている。
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