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物流ニュース
定着率低いロードサービス事業 労働力確保への取り組み
2019年6月13日
24時間365日体制で車の救援活動を行うロードサービス事業は、車社会にとって必要不可欠な社会インフラとなっている。だが、それゆえに労働は過酷で、定着率も低く、従業員の高齢化が進んでいる。様々な業界で労働力不足が問題となるなか、関東、関西、中部、九州のロードサービス事業を行っている各事業者に、労働力の現状と労働力確保への取り組みについて聞いた。
全日本高速道路レッカー事業協同組合(亀山善之理事長、東京都港区)では、全国の組合員の技術向上を図る研修会の開催や、全国の自動車整備士養成学校へ「自動車救援士初級講習会」の普及活動を開催するなど、人材の確保に寄与できる活動を積極的に行っている。亀山理事長は「24時間365日の緊急を要する事業であるので、働き方改革などの緩和はお願いしたいところだが、我々事業者も従業員一人ひとりが長く勤めていける会社づくりを行っていかなければならない」と考えている。「全国の事業者は現在、人手不足で、募集しても集まらない状況」とし、「定着率と労働力確保を高めていくためには、『人の役に立ちたい』と思う人を育てていくことと、一人でも多くの人に、仕事のやりがいをPRすること」としている。
関西地区でロードサービス事業を行っているあかつき(吉岡輝昌社長、兵庫県神戸市)と杉原自動車(杉原秀典社長、同尼崎市)は、人手不足の状況にあるという。あかつきの吉岡社長は「若い人の応募はあるが、入社しても過酷な業務なので続かない」とし、「交代制だが、緊急出動がある仕事なので、この仕事に誇りをもてる人を獲得していかなければならない」という。
仕事に誇りを持ってもらうために、研修で人の役に立ちたいという人を育てるほか、子どもらが描いた安全運転のポスターをレッカー車に貼ったり、テーマパーク「おもちゃ王国」のイベントでレッカー車を展示、デモンストレーションを行うなど、ロードサービス事業に興味を持ってもらうためのPR活動にも力を入れている。
中部地区のFAR WEST(ファーウェスト、名古屋市)の霜鳥文一社長は、「人手が足りていないところに、働き方改革による労働時間の短縮など課題は多い」とし、「弊社ではまず、従業員の離職率を低くするために、満足して働ける会社、職場づくりに取り組んでいる」という。離職されないようにするためには魅力ある会社づくりが必要だとして、同社ではコンサルタント会社に依頼して従業員のモチベーションを高めるプログラムに取り組んでいる。従業員の離職の原因は、仕事内容もあるが、人間関係と待遇が大きなポイントという。
また、同社では社会貢献と仕事への意識を高めるため、国連の2030年までに達成すべき17の目標SDGs(エス・ディー・ジーズ)に、会社全体で取り組んでいる。霜鳥社長は「弊社の仕事は対前年10%増えている。労働力確保と人材育成で品質を高めなければ生き残れない」としている。
九州地区で、レッカーサービス「熊ちゃんレッカー24」を運営している熊本旭運輸(於久初治社長、熊本県上益城郡)。同社のレッカーサービスには31人の隊員やドライバーが所属しているが、労働力は不足している。於久社長は、「隊員やドライバーのほとんどが高齢化しており、世代交代が喫緊の課題だ」とし、「募集をかけてはいるが、なかなか応募が来ないため、出勤時間を好きな時間帯に振り分けるなど、働きやすい環境づくりに取り組んでいる」としている。
同社には女性の応募もあるが、労働が過酷なためか、なかなか定着しない。だが、ロードサービス事業は保険会社の代わりでもあるので、利用者への丁寧な言葉遣いや身だしなみも重要となる。そのため、同社では女性の獲得に力を入れている。於久社長は「採用でのブランドイメージ向上のため、健康経営優良法人の認定を取得したほか、地域貢献も積極的に行っている」としたうえで、「多くの人に応募してもらうためにも、仕事内容をしっかりとPRしなければならない」としている。
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