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物流ニュース
意識障害の誘発防げ 脳MRI健診を
2019年8月20日
事業用自動車の運転者が、疾病により運転の継続ができなくなる事案が年々増加している。中でも最も多い原因が脳血管疾患だ。
脳血管疾患とは、脳動脈の異常に起因する病気で、最もよく知られているのは脳卒中である。脳出血や脳梗塞、くも膜下出血の総称だが、中でもくも膜下出血は予兆のない意識障害を引き起こすため、運転中に起こった場合は重大事故につながってしまうケースが多い。
くも膜下出血の原因のほとんどは脳動脈瘤の破裂である。血管が風船のように膨らみ、破裂すると致死的な症状を発症する危険な血管障害だ。発症年齢は40~60代が最も多く、人口10万人あたり年間15~20人に起こっているという調査結果もある。
予兆がないと言われているくも膜下出血だが、運転従事者脳MRI健診支援機構の野口一郎氏は「くも膜下出血を引き起こす未破裂の脳動脈瘤の有無は、MRI装置でMRA検査を実施することで判別できる」と話す。
MRA検査とは「磁気共鳴血管画像法」というもので、脳内の血管を鮮明な画像で映し出し、動脈硬化の進み具合や血管内部の狭窄がないか、動脈瘤がないかを調べられる。
検査により未破裂の動脈瘤が発見された場合は、開頭による脳動脈瘤頸部クリッピング術やカテーテルによるコイル塞栓術などの血管内治療で治せる。
「脳MRI健診を定期的に受ければくも膜下出血の発症を防げる。意識障害の誘発を防げれば、本人はもちろん同乗者の命や制御不能となった車両による二次、三次の事故をも未然に防げる」と野口氏は指摘する。
同機構では、運転従事者の健康起因事故防止を考慮したMRIおよびMRAを基本とする、簡易脳ドックの実施が可能な提携病院を紹介してくれる。通常の脳ドックの費用は平均して5万円程度だが、脳MRI健診であれば2万円程度で受診できる。異常所見がなければ次は約3年後の健診となる。
2017年からは「脳MRI法」が施行され、疾病運転防止の措置が努力義務として事業者に課されるようになったが、脳MRI健診が普及しているとは言い難いのが現状だ。突然の意識障害による重大事故を防ぐためにも、事業者の自主的かつ積極的な取り組みが期待される。
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