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物流ニュース
倉庫もシェアする時代へ 空きスペース探し保管場所確保
2019年7月1日
EC市場の拡大で、倉庫会社や物流会社が所有する物流施設の需要が高まっているほか、収納スペースの減少で、個人の荷物を保管する倉庫や保管場所の需要も高まっている。だが、需要を満たす空きスペースを探し出して確保することはこれまで、法人や個人にとって簡単なことではなかった。倉庫や保管場所と、利用したい法人や個人をマッチングするシェアリングサービスが、こうした状況に変化をもたらしている。
倉庫会社としては中堅企業で、主にコメの保管を行っていた寺田倉庫(東京都品川区)。同社は7年前から徐々に、大手が手を付けないニッチな市場でナンバーワンを取る事業方針にシフトしている。
同社ではその当時も、倉庫の需要は増加していくと判断していた。だが、大手と競合して案件を取りに行くだけの事業スタイルでは結局、価格勝負になってしまうと考え、ただ保管するだけのビジネスモデルからの脱却を行ってきた。
それによって、2017年にスタートした新たなビジネスモデルがクラウド収納サービス「minikura」だ。誰もが箱単位で倉庫を持てる保管スペースのシェアリングサービスを提供している。
minikuraチームの姫野良太氏は、「個人向けサービスのminikuraでは現在、1000万アイテム以上を保管している」とし、「預けた荷物をクラウド上に一つずつ登録できるのが特徴で、こうした保管の需要は大きい」としている。
このほか、「事業者向けにminikuraプラスも展開。ウェブ上で完結できる物流のプラットフォームで、我々が契約している倉庫の空いている場所に荷物を保管するサービスだ」という。
「新しい事業者が新しいサービスを立ち上げるのには時間がかかる。倉庫の契約だけで3か月くらいかかってしまう」としながらも、「我々のシステムを使えば、最短1か月で倉庫の契約ができる」と話す。
シェアリングサービスで利用者のニーズに最適なマッチングができるようになって、それまで取りこめきれなかった需要が取り込めるようになっているという。
法人向けBtoBの倉庫シェアリングサービスを提供するsouco(中原久根人社長、同千代田区)では現在、全国(主に首都圏や関西、中部、福岡)400弱の倉庫事業者の約15万坪のスペースを貸し出している。同社マーケティングマネジャーの野中由美子さんは、「弊社のシェアリングサービスでは、1パレットから、小さいスペースから貸し出しできることと、短期間から貸し出しできるのが特徴」という。
一般的に倉庫は、2年とか3年などの長いスパンでの契約になる。それを短期間でも借りれるようにしようというのが、同社のサービスのコンセプトになっている。
「2017年にサービスを開始して以来、問い合わせは多くなるばかりで、需要の大きさを実感している」としながらも、「利用者からの問い合わせや要望に応えきれていない状況で、条件全てにマッチして成立させるには物件がそろっていない」としている。
そのため、同社ではまず、倉庫会社にサービスを認知してもらうための取り組みに力を入れている。空きスペースをうまく貸し出すことができれば売り上げも上がり、経営効率も良くなるということを提案している。
野中さんは「法人の利用者に話を聞くと、その多くが、『どこの倉庫が空いていて、どのように手続きすればよいのかわからない』と、倉庫の供給情報にアクセスすることが困難なことであることが分かった」と話す。
「倉庫会社からもっと、空きスペースなどの情報が出て来たら、空きスペースなどを有効に活用することができる」とし、「より多くのニーズに応えられるだけでなく、倉庫会社にとってもメリットがある」と同社では引き続き、理解を求めていく考えだ。
大和ハウスグループで保管サービスを行っているフレームワークス(秋葉淳一社長、同千代田区)と提携して、宅配型トランクルームサービス「sharekura(シェアクラ)」を運営しているのがデータサイエンスプロフェッショナルズ(内山明夫社長、同中央区)。
同社は、データ分析支援事業も行っており、ビックデータや人工知能を活用して物流や不動産活動を効率化することで、自由にモノが移動できる仕組み作りに取り組むほか、利用者とつなぐWebシステムの提供も行っている。内山社長は、「大和ハウスグループは、自社で物流倉庫をたくさん持っていて、賃貸住宅事業の利用者も多く、それらをつなぐビジネスを模索していた」とし、「だが、そこで必要となるWebのノウハウを持っていなかったので、弊社と業務提携することになった」という。
住宅の面積が小さくなるとともに、理想とされている8から10%の収納率は、4%と達成されなくなっている。そのため、荷物を補完するためのトランクルームなどの需要が増えている。
また、ECの拡大でリアルな店舗がなく減っているが、モノは確実に置かなければならない。そうなると、倉庫が店舗の代替施設となるため、倉庫需要は今後ますます高まってくる。
こうした需要を取り込むためにも、空きスペースを有効活用するシェアリングサービスはもとより、利用者が使いやすくするためには、効率よく情報を発信していく必要がある。
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