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    移動スーパー普及への課題 年々増える買物弱者

    2019年11月8日

     
     
     

     高齢化が進む我が国では、山間部の過疎地域を中心に「買い物弱者」が年々増加しており、その数は全国に700万人以上いるといわれている。また、流通機能や交通網の弱体化によって、大都市圏でも「買い物弱者」は増えており、その対策の一つとして「移動スーパー」が注目されている。だが、「移動スーパー」は現状では、社会貢献的な意味合いが強く、事業として永続的していくことは容易ではない。買い物弱者の増加で需要は見込めるものの、実際に事業として成り立っているのは移動スーパー「とくし丸」と、ほんの一部の事業者だけだといわれている。移動スーパーを普及していくための課題について話を聞いた。

     移動スーパーを採算のとれる事業として成立させたとくし丸(住友達也社長、徳島県徳島市)。同社は2012年から、買い物弱者を支援するために移動スーパー「とくし丸」の運営を開始した。移動スーパー「とくし丸」は現在、全国に450台。「販売パートナー」と呼ばれる個人事業主が、専用の軽トラックに、同社と提携する地元スーパーから仕入れた商品を載せて、定期的に顧客を回って販売している。

     玄関先に車を停めて顧客に買い物を楽しんでもらう一方で、地域の「見守り隊」としての役割も担っており、決して「売りすぎない」ことで、顧客と末長く信頼関係を保ち、安定した販売量が確保できている。移動スーパーについて、住友社長は「社会貢献の要素が強い事業ではあるが、利益が出なければ続けることができないため、利益の出るノウハウが重要となる」とし、「移動スーパーの需要は今後、15年は伸びていく。親会社がオイシックスなので、その知名度と付加価値で、コンビニよりもコンビニエンスな移動スーパーを目指す」としている。

     全国で活躍している移動スーパー「とくし丸」の販売パートナーは40代から50代が中心の個人事業主。日販は最低6万円以上で、実際には多くのパートナーが日販平均9万円を稼いでいる。年収は平均500万円で、多い人で700万円。移動スーパーの利益率は、スーパーマーケットのリアル店舗の2〜3倍となっている。住友社長は「ジグソーパズルのピースと同じで、サービスや顧客対応など必要な要素が一つでも欠けると移動スーパーの運営は成立しない」とし、「情報の収集や共有を徹底して行うことで得たノウハウで、販売パートナーや地元スーパーと利益が上げられるビジネスモデルを確立することができた」という。

     本州と四国で総合スーパー及びスーパーマーケットの「イオン」など、400を超える店舗を運営するイオンリテール(井出武美社長、千葉県千葉市)は2011年9月から、東日本大震災の復興支援をきっかけとして、青森県で移動スーパーを開始した。

     同社ではその後、高齢者の買物支援の一環として取り組んでいる。さらに、車を運転しない高齢者が増加していることから、郊外に限らず買い物に困っている人や不便を感じている人への支援として、都市部でも移動スーパーの運営を行っている。

     同社の移動スーパーは現在、本州・四国の「イオン」12店舗で実施している。事業としての移動スーパーについて、同社は「事業として成り立つ」としており、「実施店舗によって品揃えやオペレーションなどは異なるが品揃えが豊富なため、単なる『補充買い』ではなく、メインの買物の場として顧客から支持を得ており、今後も地域や顧客のニーズ、行政からの要望などがあれば、他店舗での実施も検討していく」考えだ。

     移動スーパーを採算がとれる事業として成り立たせるためには、運営企業のノウハウに基づくビジネスモデルのほかに、自治体とうまく連携することも必要だと考えられる。こうした取り組みによって、基本的な事業成立のめどが立てば、あとはその事業の核となる移動販売車両も重要となってくる。

     買い物弱者が移動スーパーでの買い物に満足してもらうことができれば、安定した利用につながる。そのため、取扱商品に関する様々な要望に応えることができる移動販売車両の導入は、結果的に事業を成り立たせるためには必要な投資だと考えられる。

     車載用冷凍装置及び特殊架装車・設計施工&メンテナンスを行っている日章冷凍(鈴木一光社長、埼玉県川口市)ではこの秋から、軽トラック電動冷蔵冷凍車「ICE︱EAGLE」技術を応用した移動スーパー「EAGLE SUPER」を発売する。

     同社の電気式移動スーパーは、環境にやさしいエコが特徴となっており、アイスクリームの保存を可能とするマイナス25度から常温まで4つの温度帯へ対応が可能。エンジン停止状態でも温度管理ができ、電気式冷凍機・電気式ヒーターはバッテリー単独でエンジン停止状態で約2時間稼働することができる。

     さらに、夜間はAC100ボルトまたは同200ボルトに接続して、停車状態で冷凍機の継続作動も可能。また、訪問先でエンジンを停止して販売できるため、販売中の排ガスの臭い、エンジン騒音、エンジン熱風がなく、販売許可が得やすくなる。

     同社のノウハウ全てをつぎ込んだ移動スーパー「EAGLE SUPER ADVANCED TYPE」について、鈴木社長は「顧客や環境に合わせて、必要な設備だけ選ぶことができる」とし、「決して安いものではないが、環境にやさしく安心して長く使ってもらうことができる」としている。

     
     
     
     

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