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物流ニュース
標準運賃 来年3月中に告示の見込み
2019年12月16日
改正貨物自動車運送事業法の目玉ともいえる標準運賃が、早ければ来年3月中に告示させる見通しとなった。5日に第一ホテル東京で開かれた全ト協(坂本克己会長)の第183回理事会で、国交省の一見勝之自動車局長、並びに伊地知英己貨物課長から説明があった。今年7月に荷主対策の深度化、同11月に規制の適正化がそれぞれ施行された。最後の3つ目となる標準運賃の告示が来年3月に施行されれば、改正貨物自動車運送事業法の3つの柱が出揃い、トラック業界を取り巻く環境が整うことになる。
昨年12月に議員立法で成立した改正貨物自動車運送事業法。同改正は「規制の適正化」「荷主対策の深度化」、そして「標準的な運賃の告示制度の導入」の3つを柱に現在進められており、今年7月に荷主対策が、同11月に規制の適正化がスタートした。3本目となる「標準運賃の告示」は業界の目玉となる改正でもある一方、運賃が多様化する中で、果たして標準的な運賃が出せるかという声もあり、告示が難しいのではないかという意見もあった。
しかし、5日に行われた全ト協理事会で、国交省の伊地知貨物課長から、運輸審議会の諮問を経て、早ければ年度内に告示できる旨の説明があり、標準運賃告示がいよいよ最終段階に入っていることが明らかとなった。
伊地知課長によると、告示する標準運賃は、下請けとなる実運送の標準運賃を設定するとしており、認可運賃時代のタリフとは違い、上限や下限を設けず、1本の運賃を示す。さらに運賃は、業界全体の6割を占める貸切運賃を前提として出し、地域差を考慮して、ブロック別、運輸局単位での告示となる予定だ。
車種は2トン(小型)、4トン(中型)、10トン(大型)の3つで設定し、冷凍・冷蔵は割り増しとするほか、トレーラについても別途設定する。
運賃を設定するための原価については、車両は法定耐用年数で、人件費は全産業並みの賃金で計算、適正利潤については、経常利益を確保できるよう設定される。
あくまで運賃を告示するということから、付帯作業など別途料金については、標準運賃には含まず、添付する形にする予定だ。
同課長によると、今後のスケジュールとして、来年1月に運輸審議会に諮るとしており、同審議会の答申には約2か月必要とのことから、早ければ3月中に標準運賃の告示が可能だとしている。
事業法改正を先頭になって獅子奮迅する坂本克己全ト協会長は、理事会同日に行われた記者会見で、「規制の適正化」「荷主対策の深度化」、そして「標準的な運賃の告示制度の導入」の3点セットで目標が達成されるとした上で、「本当に真面目な事業者が社会から評価され、現場で汗水流して働くドライバーの生活が豊かになる、来年はそんな年にしたい」と抱負を語るとともに意欲を示した。
来年3月にも、標準的な運賃が告示される見通しとなった。事業法の改正は、昨年12月に議員立法で成立した。本来、同案件は経産省や農水省をはじめ、荷主や物流事業者を巻き込み、総合的に進められる内閣提出案件であるべきものであった。しかし、内閣提出案件では改正は困難ということで、議員立法での改正となった。5日の全ト協理事会後の記者会見で坂本会長は、事業法改正までの経緯と、改正の難しさを説明した。
規制の適正化や荷主対策の深度化もそうであるが、ともすれば自由競争に逆行するような内容と見られかねない。標準運賃の告示は、その最たるものだった。「新規の認可取得が難しくなる」「運賃を国が示す」などという法律ができることは本来、国の進め方と真反対で、成立が難しいと見る識者もいた。それだけに、改正事業法が議員立法で成立したことが、業界では画期的なことと言えた。これは、政治家や行政がトラック業界の働きがけに応えた結果だが、背景には、深刻なドライバー不足がある。
繁忙期にトラックが足りず物流に支障を来たすということが業界で問題になっているが、こうしたドライバー不足の問題は、政治家や行政にも届いており、トラック業界を取り巻く環境整備が必要との共通理解が熟成されていた。
だからこそ、こうした難しい法律改正が実現できたといえる。ただ、これはあくまでいわゆる外堀を埋めたに過ぎない。規制の適正化や荷主対策が進み、標準運賃が告示されても、肝心のトラック業界、ひいてはトラック運送事業者各社が、それをプラスとして活用していかなければ意味はない。しっかり仏に魂を入れ、本丸を攻める作業がこれからの肝になる。
これまで困難だと言われていた経済的規制強化や標準運賃の告示が、深刻な人材不足を背景にしているとはいえ、業界の要望を受け、国が進めているのである。まさに時代、風向きが変わったといえる。この流れをしっかり受け止め、逆らわずに進めていくのが、業界が健全に発展していく道筋なのかもしれない。坂本会長が常々話す、「現場で汗水流して働くドライバーの生活が豊かになる」ことこそ、業界が良くなることであり、それが本当に叶う可能性も出てきたと言えるのではないだろうか。
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