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射界
2015年12月21日号 射界
2015年12月25日
どんな仕事でも初めて手掛ける際、不安感が頭をよぎる。いざ実際にやってみると心配するほどのこともなく、意外にやりやすかったと感じる。「案ずるより産むがやすし」の心境で安堵するが、不安が大きければ大きいほど、出来上がったときの達成感は大きく自信もつく。それを繰り返しながら人は成長していくのだ。
▲若くて経験の浅い人は一生懸命に仕事を覚えようと意欲的である。だからと言って、難しい仕事さえ与えておけば成長を促すとは限らない。とても捌ききれない難しい仕事を振り当てて、せっかくの能力を潰してしまう結果を招いては本末転倒だからだ。厳しく大きく育てるには必要な肥やしを施すが、与えすぎるのもよくない。自力で成長する能力を、どう引き出すかが問われるのだ。▲大企業から傘下の中小企業に役員として天下ったTさん。最初は「進駐軍」と煙たがれ、居心地はよくなかった。歴史ある企業を盛り立てるには人心一新が第一と考え、改革に腐心した。社員には箸にも棒にもかからぬ自信過剰の者もいたが、根気よく説明することで理解が得られたのか働きぶりが急変した。その経緯をTさんに聞くが笑って答えず、「責任を果たしただけ」と言葉を濁す。
▲その後、機会あって再度聞くと、問わず語りに話した。まず全社員の能力をきちんと見極めて限界ギリギリのラインで仕事を与える。量的にも質的にも精いっぱいの線だ。新人は若者らしく、ベテランもそれ相応に取り組む姿勢を見せて自主的に働く。その姿勢がプラスアルファを生み出したようだ。能力の限界まで努力した自信と満足感を見つけた瞬間である。その意義は予想以上に大きい。
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