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射界
2016年5月2日号 射界
2016年5月13日
探偵小説の江戸川乱歩の作品だったと思うが、記憶は定かでない。ある事件の目撃者が二人おり、一人は犯人が「白い着衣だ」と証言し、もう一人は「いや、衣服は黒」と言って譲らない。両人とも間違いないと強く主張するが、虚偽の証言をしても何の利益にもならない二人の証言だけに、さすがの探偵も困り果てる。
▲結果を言ってしまえば「犯人は白と黒の縦縞を着用していた」ので、犯人を格子越しに見た二人の印象は正反対の証言となったわけ。小説だから面白く物語を展開するために、こうした語りのアヤを描き出しているが、現世にも、そんなような出来事がヤマほどある。ちょっと角度を変えて立場を逆にして考えると、正反対の結論に至ることがある。固定観念にとらわれては危険と教えている。▲難問にぶちあたる。あれこれ一生懸命に考えるものの、いつしか堂々巡りに陥って、結論は同じところに行き着いてしまう。そんなとき、既成の思考回路を断ち切って、これまでとは全く違った、非常識と言われるくらいの飛躍した論理展開を試みてはどうだろうか。理路整然と誰もが納得する意見よりも、何か突飛なヒントを秘めた非論理の展開が、意外に難問を解決に導くかも知れない。
▲袋小路に迷い込み、どうしても出口が見つからないと人は焦る。常識的で論理的な思考では出口が見つからない迷路でも、常識を捨てて虚心になり、最初から考え直すのも一つの手だ。「常識とは、二点間の最短距離である」と言った西哲の言葉を借用すれば、時と場合によっては最短コースを踏み外すのも悪くない。常識という固定観念を打ち破れば、全く別の世界が広がる期待は大きい。
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