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射界
2016年10月10日号 射界
2016年10月14日
「天に唾(つば)をする」という古諺がある。上に向かって唾を吐けば、必ずその唾は自分の顔に落ちてくる。身のほどもわきまえず、人の悪口を言ったり、態度や行動を示せば、その悪口や行動、態度がそのまま自分の欠点に当てはまり、逆に自分の身を傷つけて災いを招く…という意味。中国の経典『四十二章経』にある。
▲西欧には「鰐(ワニ)の涙」という教えもある。水際に人影を見つけると、ワニは『できれば此奴(こやつ)を食ってしまいたい。食ってしまった後、涙を流して悲しんでやればよい』と考える。偽善的なそら涙を見せて自らを納得させようとする。考えて見れば、こんな論法で甘い汁を吸っている人が世の中には多いという。日常生活でも、誰もが自分の言動を正当化しようとして使う手だ。▲芸能週刊誌や女性誌に限らず、多くの人はゴシップや噂話をひそかに好むところがある。それだけではない。ちゃんとした根拠があっての話でなく、ただ面白おかしく中身を膨らませながら、ちょっとした噂話を他人に伝える、そこにひそかな楽しさがある。色んな噂話には確かに興味をそそられ、話し伝える人の数が多ければ多いほど、話の中身は次第に脚色されるから怖い。
▲問題は「よかれ」と思って善意で話したり行動したりすることだ。相手のためになると信じての言動であっても、それがかえって相手の迷惑になったり、傷つけたりするケースもなくはない。さらに悲しいのは善意であるゆえに、相手の思惑など全く意に介していないことだ。「人をそしって傷つくのは、そしった人、そしられた人、それを聞かされている人」という戒めを心に銘記したい。
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