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射界
2019年2月11日号 射界
2019年2月18日
些細なことだが、何事にも律義な振る舞いを見せる人がいる。歩行を妨げる放置自転車を列に並べたり、捨てられたペットボトルを見かけたらごみ箱に入れたりする人だ。誰かを意識しているわけではない。その人の気持ちが、そのまま行動に駆り立てている。本物の社会性を身に付けている。
▲一つひとつの行動は、特別に取り立てて話題にするほどのことではないが、社会的マナーを何気なく自然体に見せる姿がよい。感情的に異議を申し立てたいところでも、何食わぬ顔してウイットとユーモアでフォローできる余裕すら感じられる。こんな振る舞いができる若い男性に、年頃の女性は必ず魅せられるだろう。真の社会性から滲み出る魅力は強い。
▲最近は父親の威厳がなくなったという。それだけ母親の存在感が強くなったことだが、それだけだろうか。昭和、あるいはそれ以前世代の親父は、どちらかと言えば寡黙だった。〝沈黙は金〟というが、銅くらいの価値を持っていたようだ。併せて一生懸命に働いて家族を養い、意思決定の重大事にはリーダーシップを発揮して、その威厳と存在を誇示してきた。
▲「我が子を慈しむ」母性の美しさは広く世間が認めるところだが、父性の大切さが論じられる機会は残念ながら少ない。だが冷静に考えれば父性の大切さを意識する機会は多い。寡黙だが頼られる存在…それが父性の拠り所とすれば、何気なく社会マナーを発揮して放置自転車を整えるのもよい。ことさら垂訓の必要はなく、行動で示せるよう父性を磨きたい。
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