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射界
2019年8月26日号 射界
2019年9月9日
いい加減な知識や技術で芸術作品を模作しても、それは所詮、ニセモノの域を出ない。なぜなら創造性がないからである。創造性とは新しいアイデアを考え出す能力であり、併せて逞しい問題解決能力も秘めている。幼い子らが無心に描く絵に、大人が太刀打ちできない創造性を感じる例がそれだ。
▲北欧の諺(ことわざ)に「小児と酔人は真実を話す」というのがある。酔人とは酔っ払いを意味するので論外として、小児は幸いにも計算づくの世間知に毒されることなく、純粋な観察力で発想した絵を描き上げる。ときには大人の能力を超えた鋭い観察力が発揮され、おかしな常識に縛られず、肌で感じた感触をそのまま線と色彩で表現しているのに感動する。
▲小児らに宿るのは純粋な好奇心だけだ。大人のように上手に描こうとする計算もなければ打算もない。一点の曇りもない純粋な好奇心だけである。頭に浮かんだ事柄を、なんのためらいもなく手を動かして絵に仕上げていく。お絵描きに限定することなく、大人もまた素直に小児の心にそって考え耳を傾けたい。色んな示唆に満ちたアイデアが聞こえてくるはず。
▲人間は長い歴史の中、多くの壁を打ち破って前進してきた。ときには人間の知恵を超えた至難の問題もあったはず。その日暮らしに満足することなく、次々と大きな壁を乗り越えて創造に努めてきたはずだ。酔人の〝たわ言〟はおくとして、何か問題にぶつかったとき、小児の素朴な心に立ち返って「なぜだろう」と改めて問うだけの余裕と気持ちが大切である。
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