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    運賃値下げで足引っ張り合い 結局は荷主の思うツボ

    2010年10月20日

     
     
     

     昔は大手と中小には垣根があり、互いに奪い合わない、見えない領域が存在していた。しかし今、荷主のコスト削減や景気低迷による競争激化により、同じ土俵で厳しい奪い合いが行われている。「今まで手を出してこなかった大手が、荷主にちょっかいを出している」と話す中小・零細の経営者は、大手の見境のない営業攻勢に危機感を募らせている。資本力では太刀打ちできない中で、経験と人脈、そして融通や小回りの利くサービスで応酬し、参入を防いだものの、無傷とはいかず、その代償は小さくはない。「業界内で足の引っ張り合いを続ければ荷主の思うつぼだ」と指摘する経営者の声をよそに、こうした事態が日常茶飯事となっている。


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     「まさか、あんな提案をするとは予想もしなかった」と話すのは千葉県の事業者。食品メーカーを荷主に食品輸送を手掛けているが、荷主から同業他社が営業に来た旨を伝えられた。

     長年の取引で信頼関係のある同社は、荷主からその提案書を見せてもらった。提案書には名前の知れた大手の運送会社の名前。運賃単価や数量が細かく記載され、同社よりも月間数百万円が削減できる内容だった。「荷主の誰かが情報を与え、見積もりを出させたのだろう。確かに提案内容そのままでいけば安くできるだろうが、緊急に対応するスポットなど効率の悪い仕事はまったく計算されておらず、これでは絶対に無理だ」と、その旨を荷主に説明した。

     ただ、見積もりが出ており、それが同社よりも安くできる内容であれば、物流コストを見直したい荷主は無視するわけにはいかず、交渉の場を設ける姿勢を見せてきた。「荷主の立場も分かるが、何の落ち度もなく、無理難題にも応じてきた我々の立場も理解して欲しい」と訴えたが、現状維持で済ますことはできず、結局、運賃を下げることで大手の参入を防いだ。

     埼玉県の事業者も、長年取引してきた荷主に大手の横槍が入ったという。「絶対にウチしかできない」と自信を見せる同社社長だったが、大手は、荷主の元請けとなって同社を協力会社として使うという提案をしてきたのだ。

     「ウチを下でやらせて、どうやって物流費を削減するのか。結局、運賃を下げるしか手はないだろう」と憤慨した同社長は開き直り、荷主に大手の下ではやらないと説明した。

     荷主は同社の言い分を認め理解し、大手の参入を断ってくれたものの、その一方で同社に運賃の値下げを求めてきた。「参入を防いでくれた恩がある以上、そのままというわけにいかない」と値下げに応じた同社長は、「信用していると見せかけて、実は運賃値下げをうまくやられたという感じだ」と不満を口にする。

     荷物以上にトラックが余っている、いわば供給過多が足を引っ張り合う現状をもたらしているのかもしれない。双方に利益をもたらす提案なら大いに結構だが、荷主だけが得をするのでは、業界の体質は脆弱になるばかり。荷主、物流会社がともに尊重しあえる関係を粘り強く構築する努力が必要だ。(高田直樹)

     
     
     
     
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