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    意識消失のドライバー 再び医師の「お墨付き」

    2011年11月8日

     
     
     

    truck2_1107.jpg 「意識を失って救急車で病院へ運び込まれたものの、脳波検査やMRIで『異常なし』と判断され、『運転業務にも支障はない』と書かれた診断書をもらってきたドライバーを、運送会社は一体、どう扱えばいいのか」という本紙9月12日号で取り上げた問題。運送会社の社長が担当医師に対し、「長距離運転をともなう職業ドライバーであること」を踏まえて再度の診断書を求めていたが、過日、2人の担当医師からそれぞれ診断書が届いた。1通には「長距離輸送のトラックでの就労は可能と考える」、2通目にも「就労(長距離の車の運転)は問題ない」と書かれていた。



     「意識を失ったのが運転中ではなかったのが救いだった」というドライバーは、買い物に入ったコンビニで倒れた。救急車で運ばれた先の病院で精密検査を受けたが、これといった異常は見つからず、診断書には「血管迷走神経反射による一時的な発作」と記載。倒れた本人はトラックのドライバーであることを告げたにもかかわらず、診断書には「仕事に問題はないと考える」との文言が加えられていた…というのが、同問題の流れ。

     運送会社として、どう対応すべきかを聞いた当時、関係する行政は「定期の健康診断は企業にとって最低限の責務であり、個別の細かな対処を講じる必要がある」「医師を交えて会社、本人の3者で話し合うことが大切」とコメント。また、「複数の医療機関から診断書を取るべきだろう」といったアドバイスもあったが、運送会社の社長も「いまの状況でハンドルを握らせるわけにはいかない」と判断。担当医師に「深夜労働をともなう長距離ドライバーであることを踏まえ、あらためて診断書が欲しい」と電子メールを送信。

     それから数か月たった過日、社長の元に2通の診断書が届いた。1通は最初の診断書を書いた医師からのもので、他方はドライバーが抱えていた糖尿病を診察した同じ医療機関に所属する医師による診断書だった。糖尿病の医師は「(糖尿病の)外来通院は必要」としながらも、「長距離トラックの仕事は可能」と判断。当初の医師は2回目の診断書でも「一過性の現象(意識消失発作)」との理由で、「就労(長距離の車の運転)は問題ない」としている。

     あらためて診断書を手にして頭を抱えた社長だったが、しばらくして事態は意外な方向に動いた。「傷病手当と、その不足分を会社が補てんする格好でドライバーは自宅で待機させていたが、その間に目の調子が悪くなったようで、訪ねた眼科の医師から(自動車運転の)ドクターストップがかかったらしい」と社長。糖尿病の合併症の可能性があるとのことで、「あっさり本人が退職願を出してきた」という。

     診断書をタテに「働けないのはオカシイ」と、ドライバーが詰め寄るような最悪の場面も想定していただけに胸をなで下ろすことになったが、もし同様のケースが自分の会社で起きた場合、どうすればいいのかという問題は残ったまま。トラック運送経営および、労使間紛争の問題などにも精通する瀧澤学氏(社会保険労務士)は「まずはセカンド・オピニオンを求めるべき。(今回の2度にわたる診断書は)いわばドライバー側の病院ととらえ、次は会社側が指定する医療機関に診断を委ねる必要があるだろう」と指摘する。

     また、「『倉庫作業への配置転換で収入が減った』と不満を漏らすトラブルの可能性もあるが、『残業時間が長いためにドライバーは給料が高い』という仕組みを説明することも重要」と同氏。さらに「転勤や配置転換は会社側の権利であり、その旨を就業規則に記しているのが一般的」(同)と説明する。

     国交省は10月14日付で、「事業用自動車の運転者の健康状態の確認の再徹底について」とする文書を全ト協や日バ協など営業ナンバー車を抱える六つの業界団体あてに発信した。同月に愛知県内で発生した「くも膜下出血を発症した貸切バスのドライバーによる重大事故」が直接の原因となっているが、同様の事故は全国各地で頻発しているのが実情だ。(長尾和仁)

     
     
     
     
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