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遺品整理に高まる関心 事業化するケース増
2012年8月10日
「古物商の許可も取得して事業開始に備えたが、地元の自治体によれば一般廃棄物の収集・運搬許可は新規に認めないという。ただ、何の許可も持たない業者が商売しているし、産業廃棄物の許可で構わないという関係者もいて混乱している」と話す運送会社の経営者(広島市)が狙うのは、昨年に公開された映画で関心が高まった「遺品整理業」。総人口に占める高齢者の割合が急拡大するなかで、いわゆる独居老人の所帯も増加しており、それにともなって遺品整理を事業化するケースも目立つが、対象物品をゴミと見るか有価物と考えるか、また個別の契約内容によっても判断が難しく、明確なルールがないまま現場業務は流れているようだ。
「映画などで注目されたせいか、最近は遺品整理を担う専門家としての個人資格まで登場しているが、それがないと商売ができないわけじゃない」と、十年近く前から遺品整理も含めて「不用品の引き取りサービス」を手掛けてきた岡山市の運送会社。広島市の運送会社が直面する悩みを切り出すと、「家庭ゴミなら一般廃棄物ということになるが、極端にいえば『リサイクルで売れる品物もゴミも、丸ごと有価物として買い取る』という契約なら古物商の許可さえあればいいわけで、そんな業者も少なくないと聞く」と話す。一般廃棄物に加え、産業廃棄物の収集・運搬許可も持っている関西地方の運送会社は「一般廃棄物の許可があるに越したことはないが、その辺りは定かではない」と説明。そのうえで「公営住宅を例に取ると、管理や修繕業務を請け負う民間企業が遺品整理や不用品の処分などを発注するケースもあり、その場合は産業廃棄物の処理に不可欠なマニフェストが使われる」と、「何がなんでも一般廃棄物の許可が必要というわけでもない」実情を口にする。
運送会社も含め、遺品整理を手掛ける数社に聞くと「最近は不動産会社などから依頼されるケースが増えている」という。広島市内の賃貸住宅業者によれば、「入居者が亡くなった際の清掃・撤去費用などに充てるため、建物のオーナーや管理会社が受け取る格好の高齢入居者保険というようなものがある。作業は専門業者に依頼するのが一般的」と説明。
また、公営住宅についても「強制執行の補助業務として入札業者に任せているなかに遺品整理がある。資格要件は当然あるが、業者自身が有資格者か否かは求めておらず、(持たない場合は一般廃棄物か産業廃棄物かを踏まえながら)適切に処理できるところへ委託するようにお願いしている。また、最終的に(マニフェストなどで適正処理の様子を)チェックもしている」(UR都市機構・西日本支社)としている。
最新の国勢調査データによれば、群馬・南牧村の57・2%をトップに「65歳以上」が人口の半数近くを占める市町村が全国で急増。また、高齢者(65歳以上)がいる家庭は平成22年の時点で2071万世帯(全体の42・6%=厚労省・国民生活基礎調査)で、さらに「高齢者の単独世帯」は同42年に37・7%にまで上昇すると見込まれている。
こうした情勢を踏まえて今後、さらにニーズの高まりが予想される遺品整理・処分業。ただ、「産業廃棄物ではないものが一般廃棄物というのが基本的な考え方だが、ゴミの定義は非常に難しい」(産業廃棄物の業界団体幹部)、「ゴミの不法投棄でもあれば別だが、現状では根拠となる事業法がない。かつて不法行為が問題となり、結果としてドライバーに2種免許が必要になった運転代行業と同じように歩むのではないか」(タクシー事業も手掛ける中国地方の運送会社)との声も聞かれる。(長尾和仁)
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