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行き場失うドライバー 社会的規制強化の影響
2013年10月30日
悪質違反への罰則強化が進み、生き残っていくためには、法令順守が大前提となってきたトラック業界。長時間労働や社会保険未加入、点呼不備など、法令違反を犯せば車両停止や事業停止、さらに悪質度が高ければ許可取り消しという厳しい処分が待ち受けている。悪質事業者の徹底排除という行政の姿勢が浮き彫りとなる一方で、トラック業界はこれまで「許可1枚で誰でもできる」ということで雇用環境を創出してきた側面もある。そうしたぎりぎりの中で働くドライバーが現在、社会的規制強化の中で働く場所を失いかねないという事態に陥っている。
首都圏に本社を置く事業者には約40人のドライバーが働いており、年齢層は30代から60代と幅広い。人手不足が課題となっている業界において、同社は人材不足とは無縁だという。そこには理由がある。同社の社長は、求人で応募してきた人が例えどんな人間であれ、全員を採用しているのだ。例えば、借金で逃げ回っている人でも、あいさつがろくに出来ない人でも、他社なら確実に採用しないような人材を採用しているという。そのため、ドライバーの質はお世辞にもいいとは言えない。仕事は同業他社の下請けがほとんどで、運賃も安く、給料も高くは支払えない。それでも、ドライバーらは同社を辞めない。例え辞めても他で働ける見込みがないと本人たちも理解しているのだという。
しかし、そんな同社にも、社会的規制強化の影響が徐々に出始めている。同社は全員が社会保険未加入で、これから年金を支払っても将来的に受給できない高齢者もいる。加えて、同社の今の売り上げでは、社会保険料を賄うことは非現実的で、加入したくても出来ないという現状にある。
適正化機関の巡回指導で問題を指摘され、改善報告を作ったものの、それをすべて守れるほど余裕はない。この状況下で監査が入れば、行政処分はまず免れない。ぎりぎりの資金繰りでやりくりしている同社にとって、車両停止処分で収まればまだいいが、事業停止ということになれば、たちまち会社は行き詰まってしまう。
そうなれば、ドライバーたちは自動的に同社を去らなければならなくなる。他社で通用する人間ではないため、同社での職を失えば、路頭に迷うドライバーも出てくると、同社社長は危惧している。
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