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若手育たない現場 幅を利かす古参者、配送先でトラブル
2013年11月11日
若者の車離れや中型免許制度の導入で、若手の人材確保に赤信号がともるトラック業界。業界団体でも度々、若年人材の獲得が議題に上っている。しかし、ドライバー取材から見えてきたのは、職場環境の課題から若年者を育てられないという現状だ。深刻化する人材不足の裏には、若年者の確保という入り口だけでなく、育成という壁が立ちはだかる。若年者の獲得とともに、育成についても業界を挙げて取り組んでいく必要があるといえる。
関西地区で長年地元の運送会社に勤めてきた40代のドライバーは、「若者が入ってこないというが、入ってきても50歳以上の年長者が潰している」と、会社の内部事情を明かす。「うちでは、古参ドライバーが作る派閥が社内を牛耳っている。配車マンも言いなりで、楽な仕事を先に取ってしまい、結局、若手や新参者がきつい仕事ばかりやる羽目になる」とし、「点呼の担当もドライバー上がりのおじいちゃん。検知器の誤反応でアルコールが検出されただけでもドライバーを怒鳴り散らす。朝からそんなことでは、やる気も削がれてしまう」と嘆く。原因について、「社長の目が届かなかったり、管理職が『仲が悪くても、とにかく仕事をこなして欲しい』と見て見ぬ振りだったりする」と話すドライバーは、「若手を育てる人間がいない。これでは若手が入ってきても続かない」と指摘する。
一方、埼玉県内の運送会社で働く50代のドライバーは、「客先でひどい扱いを受けることも、若者が入ってこない、続かない理由」だという。物流センターや倉庫などでの荷積み、荷下ろし時、客先の従業員から荷物の場所を教えてもらえなかったり、無視されたりすることがあり、「お前らの代わりはいくらでもいる」と、見下したような態度を取られることも少なくないのだという。「そんな環境に嫌気がさして、辞める若者も多い」と打ち明ける。
同じく埼玉県で地元の運送会社に勤めるドライバーは、「配車マンが若いと古株のベテランドライバーの言いなりになってしまうことは多々ある。社長が現場任せにすることで、ベテランドライバーがのさばり、若手ドライバーや若い配車マンが育たず辞めていく。そんな光景を何度も目にしてきた」と話している。
事業者側は人材不足について「以前ほど稼げなくなった」という理由を想定しているが、現場のドライバーからは若年者を育てる体制がないことで人材が流出していることを指摘する声が大きい。
賃金が安くても若手人材を集めている業界の人材育成手法にOJT(オンザジョブトレーニング、職場内訓練)がある。飲食業界ではOJTの社員教育の仕組みが一般的で、入社当初はもちろん、一人で仕事をこなせるようになってからも職場内で随時上司の指示を仰ぐことができる。上司側も、自分が働きながら部下の仕事のチェックや職場の問題を把握することができる。ピークタイムは指導にあたれないとしても、基本的に同じ場所で仕事にあたっているため、合間で指導やコミュニケーションをとることが可能なのが特徴だ。
日本能率協会が4月にまとめた「2013年度新入社員(会社や社会に対する意識調査)結果」によると、「上司や先輩にどのような対応(指導)を期待しているか」という質問に対し、「頻繁にコミュニケーションをとってくれる」が50.1%で最も多く、「仕事について、事細かに教えてくれる」が31.7%と3割を超え、さらに、「困った時は助けてくれる」が29.9%と高く、若者が職場で先輩や上司が積極的に関わり指導してくれることを望んでいることがうかがえる。
実際の職場で勤務しながら仕事を覚えていくためコストの削減にもなり、一般的となりつつあるOJTは、意識調査から明らかとなった若者の「側で教えてほしい」という希望ともマッチしている。業界でも資金的に余裕のある事業者では、こうした若者のニーズに対応し手厚い研修制度で人材を集めている事例もあるものの、一般的に「乗ったら一人」のドライバー職ではOJTの実施が難しく、研修に費用をかけられない事業者が圧倒的に多いのが実情だ。
これまで、中型免許など人材確保の入口に目が向けられてきたが、今後、それだけでなく若手ドライバーの育成にも取り組んでいくことが人材不足の解消を図るうえで必要だといえる。
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