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一方的な運賃の通達 ファクス1枚で値下げ・値上げ
2014年1月29日
「荷主から年明け1発目に来たファクスが運賃の値下げを『通達』するものだった」と話す北海道の運送事業者。「何の打ち合わせもなく来た1枚の紙で、数パーセント運賃が下げられた」と腑に落ちない表情でいるものの、「こちらとしては何も言えない」としている。
下請法や独禁法物流特殊指定では、「下請け事業者と十分協議することなく一方的に下請け代金を定めた」「物流事業者と協議することなく、自社の目標金額をもって代金の額を決定した」といった場合は、禁止事項の「買いたたき」とされることがある。しかし、このような「十分な協議を経ない一方的な通達」が、表面化することは滅多にない。発注側の言い値を受け入れて仕事を継続するか、どうしても合わない場合は黙ってその仕事から撤退するというのが一般的だ。同事業者のケースについて、のぞみ・ひかり法律事務所(札幌市中央区)の古山忠弁護士は「優越的地位の濫用に当てはまりそうで、下請法などに引っかかる可能性が高い。だが、運送事業者がそれを解消するために時間をかけて親事業者や荷主を訴えても、受けた損害が回復するわけではないので現実的ではないのが実際のところ。正義としての判断よりも、経営としての判断が優先されるので、難しい問題だ」と述べ、現状の「望ましい取引関係」を構築するための法制度の実効性に疑問があると話す。
道内の別の事業者は「荷主だけではなく、フェリー会社も『何パーセント値上げする』と一方的に通達してくるが、道外便を行う立場としてはフェリーは使わざるを得ないので対処できない」とこちらも困り顔だ。
一方で、書面1枚で運賃の値上げに成功している道内の事業者もいる。この事業者は「今のままの運賃では本当に経営を続けられない」と判断し、昨年後半から400社近い荷主に対して、運賃の値上げの要請を不退転の決意で行った。しかし、すべての荷主を回るだけの人員も時間もなかったため、そのうちの約70社には「運賃を値上げします」という旨のファクスを送信した。
「半分くらいの荷主はこの条件を飲まないかもしれないが、その時は仕事をやめよう」と考えていたが、実際に苦情が来たのはわずか3社。それも「ファクス1枚でお願いすることか」といった要請の手法へのクレームだったという。この荷主にはフォローをし、70社は自動的に値上げした運賃を請求するようにした。半ば強制的な値上げを広く受け入れてもらった形だ。
運送業界の切実な人手と車両の不足を荷主や元請け事業者が感じ始めた昨今、「実運送事業者からの一方的な値上げの通達」といった逆転現象も見られるようになっている。
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